「風邪をひいていないのに咳が続く」40歳以上は要注意…"うつ症状"を伴う患者もいる「呼吸器の病気」の名前
■医師としては禁煙を推奨したい 今まで喫煙によって得られていた楽しみが奪われることなく、健康被害を減らすことができるのであれば、加熱式たばこへの切り替えは一つの選択肢になりえるのかもしれませんが、まだまだ研究データは少なく、その影響を評価するための十分な根拠はありません。 「COPD診断と治療のためのガイドライン(2022)」においても「加熱式や電子たばこが紙巻たばこより、健康被害が低いという証拠はなくその喫煙や使用は推奨されていません」と記載されており、やはり医師としては加熱式タバコを含めて禁煙を推奨したいと思います。 ■インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種を推奨 現在COPDを根本的に治療する方法はありません。禁煙が最も有効な治療法と言われていますが、早期に治療を開始することで、健康な人と変わらない生活を送ることができます。また、COPD患者が感染症に罹患すると重症化しやすく、COPD自体の増悪原因になるとも言われています。 これを防ぐために、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。インフルエンザワクチンの接種によりCOPDの増悪頻度が減少することはよく知られています。また、2年間にわたりインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを併用したグループとインフルエンザワクチンのみを接種したグループを、感染性急性増悪の観点から比較した試験があります。この試験では、インフルエンザワクチン単独の場合に比べ併用グループの方がCOPDの感染性増悪の頻度が減少することが明らかになりました[Akitsugu Furumoto et.al “Additive effect of pneumococcal vaccine and influenza vaccine on acute exacerbation in patients with chronic lung disease” Vaccine. 2008 Aug 5;26(33):4284-9.]。 COPD患者においては、インフルエンザワクチンは毎年、肺炎球菌ワクチンは年齢も考慮しながら定期的に接種できると良いでしょう。また感染リスクを下げるという観点から、患者のみならず、ご家族や介助者の方にも接種をおすすめしたいと思います。 COPDは日常生活に大きな影響を与える病気ですが、適切な管理と治療によって生活の質を維持することができます。早期診断と治療、そして禁煙が重要です。もしCOPDの症状に心当たりがある場合は、早めに医療期間を受診し、COPDの影響を最小限に抑えましょう。 ---------- 池井 佑丞(いけい・ゆうすけ) 産業医 プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。 ----------
産業医 池井 佑丞