【実家の放棄】1人っ子なので親が亡くなると相続人は私1人になります。古びた実家を継ぎたくないのですが、もし「相続放棄」したら実家はどうなりますか?
実家を相続してしまうと固定資産税の負担のほか物件の管理責任も生じます。 もし管理が不十分で倒木やブロック塀の倒壊などが生じ、周辺住民に被害を及ぼした場合は、損害賠償請求を受けるおそれもあります。 住宅需要の少ない地域にあるなど、活用が難しい実家の相続は負担が大きいため、相続放棄を選びたくなります。もし相続放棄した場合、実家の管理や放棄後の手続はどうなるのでしょうか? 解説していきます。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
「実家だけを相続放棄」はできない
活用が難しい実家などのデメリットのある相続財産がある場合、相続放棄を考えたくなりますが、まず、大前提として相続財産の一部を相続放棄することはできません。 相続放棄をする場合は全ての相続財産を手放すことになるため、実家を相続放棄するのであれば預貯金なども手放すことになります。 また、相続財産を利用した時点で単純相続を選択したと見なされ、相続放棄できなくなる可能性があります。
相続放棄の進め方
相続財産を全て手放しても相続放棄によるメリットが大きく相続放棄を決心した場合、相続放棄の手続はどうすればいいのでしょうか? 相続放棄は司法書士や弁護士といった専門家にお願いすることもできますが、自分で手続を行うこともできます。 相続放棄は、相続の開始を知ってから3ヶ月以内に相続放棄申述書と住民票の除票や戸籍全部事項証明書といった必要書類を用意して家庭裁判所に申し立てを行います。その後、家庭裁判所から照会書が送られてくるため、これを返信することで相続放棄が受理されます。 相続人のいない財産は相続財産清算人により清算され、借金を支払っても財産が残った場合は最終的に国庫に帰属します。
相続放棄が認められても一定期間は保存義務が残る場合も
相続放棄が済めば実家の管理責任がすぐになくなると思われがちですが、まず、ご自身が実家に居住していたなど現に占有していた場合、次の方に引き継ぐまでは自己の財産と同程度の保存義務が生じます。 また、特に実家がマンションの場合は、管理が引き継がれるまではマンション管理組合から管理費・修繕積立金が請求されることもあります。 相続放棄により相続人がいない場合、マンション管理費などは次の購入者が負担することになりますので、管理費等を請求された場合は相続放棄の受理通知書等を提出するなどして所有していないことをマンション管理組合に伝えておくようにしましょう。 相続放棄後の実家の保存は、家庭裁判所により「相続財産清算人」が選任されるまでは続けることになります。 相続財産清算人の選任には、申立人が経費や報酬相当額を家庭裁判所に予納する必要があります。相続財産から相続清算に関する費用が支払えなかった場合はこの予納金から支払われることになります。 相続放棄を行っても状況によっては金銭的負担が生じることがあります。一度相続放棄をしてしまうと撤回することはできないので、相続財産の資産額・負債額の確認だけでなく、相続放棄後の負担も加味して相続放棄をするか否かを決めるようにしましょう。