フィリピンの中華学校と中国共産党の世界戦略
(2024.3.13~5.1 50日間 総費用23万8000円〈航空券含む〉) 聖十字架中国中学の正門。案内してくれたディレクター氏は教団から派遣さ れた40歳くらいの教育管理の専門家
フィリピンの中国人社会はマレーシアやタイとはどこか違う
マゼランがセブ島に上陸して以来、フィリピンは400年もスペインの支配下にあったが、唐の時代から現代まで大陸から中国人はフィリピン各地に綿々と移住してきた。そして大半は混血によりフィリピン社会に同化した。 フィリピンではスペイン系はメスティーソ、中国系はチノイ、フィリピン系はピノイと呼ばれる。人口比率では諸説あるようだがチノイは20%弱、メスティーソは数パーセントで圧倒的多数はピノイのようだ。代々混血して生活・言語もピノイに同化しているので一見してメスティーソ、チノイと分かるケースは少ない。例えばコラソン・アキノ、ベニグノ・アキノの二人の大統領を輩出したアキノ家や大財閥はチノイである。 アジア各国の華僑社会に詳しい知人のI氏によると華僑はその土地で中華街を形成する。そして華僑会館(出身地別会館もある)、中華学校、中華新聞、中華商工会議所、中国人共同墓地などを設ける。筆者の見聞ではボルネオ島のコタキナバルの中華街が典型的だ。(I氏の知見を含めて『驚異の華僑ネットワークの真髄を覗く』ご参照) 本稿ではフィリピンの中華学校を取り上げる。
中国人キリスト教会と新設のキリスト教中華学校
ドマゲッティ中心街に位置する1928年創立の聖十字架中国中学を訪問(本編第5回参照)。この老舗中華学校の過半の生徒はピノイである。教育水準が高くキャリア形成に有用な中国語を習得するのが入学動機だ。近隣の中国人キリスト教会に行くと郊外に運動場、プール、実験室などを完備した中華学校、“DACCA”を新たに開校したと説明を受けた。 3月31日。ドゥマゲティ中心街から郊外へ約6キロにあるDACCA訪問。広い敷地に体育館、運動場、テニスコート、プール、そして新しい四階建ての校舎。イースター休暇で休校していたがガードマンから話を聞けた。 DACCAとはドゥマゲティ博愛中国人キリスト教徒学院(Dumaguete Agape Chinese Christian Academy)の略称。2011年開校、現在生徒数約200人。幼稚園、小学校、中学(2年まで)。校舎や敷地の規模から今後さらに生徒数を増やして高校までの一貫教育体制にするという計画も頷けた。 繁華街に位置する聖十字架中華学校は生徒数約660人で狭い中庭を囲んで校舎が敷地一杯に建てられ拡張余地はない。それで郊外に新たに中華学校を建設した訳だが支援母体のドゥマゲティの中国人キリスト教会は信者数300人ほどだ。 キリスト教徒以外も含めてドゥマゲティの中国人社会はせいぜい1000人程度の規模と聞いた。改めてフィリピンにおける華僑の財力と教育熱心ぶりに感嘆した。