フィリピンの中華学校と中国共産党の世界戦略
興味深い女性校長の来歴と奇異な国際感覚
女性校長は精力的な敏腕経営者という雰囲気。香港生まれで1960年代末に小学生の時に家族とフィリピンに移住。当時は中華人民共和国成立後約20年、東西冷戦期でチェコの“プラハの春”をソ連軍が蹂躙、中ソ対立激化という時代。 彼女自身もこの中華学校の卒業生。なんと英語・広東語の他に北京語(標準中国語)・福建語・タガログ語・ビサヤ語を話すというマルチ・リンガル国際人。彼女は親戚・友人がいるのでしばしば香港へ遊びに行く。さらには中国大陸にも頻繁に視察や観光で訪問するという。 共産党支配に対する批判的見解を引き出そうと質問したが、彼女は「現在の香港や中国に何ら違和感を覚えないし経済的に発展して安定している香港や中国が好きだ」と断言した。さらに「香港では政治的自由が奪われているのでは?」と水を向けると「法律に抵触しなければ自由に生活できるし問題ない」と反論。 そして「最近は福島の汚染水が恐いので魚介類を食べない。日本人は政府の言論統制のせいで汚染水の深刻な問題を知らされていない。日本の言論規制は先進国では最下位と報道されているのは当然ですね」と口にした。まるで、中国外務省報道官のような発言である。ましてや、処理水ではなく、汚染水と言うところなどもそっくりである。後々考えてみたら……。
日本の中華学校は中国派と台湾派に
帰国後に日本国内の中華学校を調べてみた。日本に亡命中の孫文が在日華僑子女の教育のために提唱して現在の横浜中華学院が設立されたのが嚆矢という。その後東京、大阪、神戸にも開設された。戦後中華人民共和国が成立すると、台湾の国民党支持派と中国支持派に分かれたようだ。台湾支持派は横浜中華学院、東京中華学校、大阪中華学校、中国支持派は横浜山手中華学校、神戸中華同文学校となっているらしい(筆者注・学校に通っている子どもたちが中国系や台湾系かを支持しているのかどうかは筆者には分からないし、思想の話をしているわけではなく、あくまでも歴史的経緯を記している)。 ちなみに横浜山手中華学校には2008年に当時の胡錦涛国家主席が訪問している。夏休みのキャンプは中国で修学旅行も北京だ。中国の公立学校との交流も盛んなようだ。中国からの物的支援もあり神戸中華同文学校は中国駐大阪領事館から大型衛星アンテナの寄贈を受けている。他方で台湾系の3校も相互に密に交流して台湾国立大学と提携している。 韓国政府認定の韓国学校と朝鮮総連系の朝鮮人学校のように分かれているのだ。