フィリピンの中華学校と中国共産党の世界戦略
フィリピンの中華学校の特徴はなにか
ドマゲッティ市中心街の聖十字架中国中学、同市郊外の博愛中国人キリスト教徒学院、バコロド市のセント・ジョン・ミッション華明学校、そして老舗中華学校の四校を訪問したことでフィリピンの中華学校については以下の特徴があることに気づいた。 生徒の過半数は純粋なフィリピン人(ピノイ)である。授業は英語・日常言語(ビサヤ語またはタガログ語)で行われる。標準中国語は選択科目として教える。フィリピン政府から認可された正規の私立の幼稚園・小中高一貫教育機関である。カリキュラムも教育省の指導要領に準拠。キリスト教系の中華学校が多い。スペイン植民地時代から戦前までの期間に移住してきた中国人は大半がカトリックに改宗しているので中華学校の設立・運営にキリスト教団が関わってきたものと思われる。例えばボルネオ島のコタキナバルの小中高一貫の中華学校はマレーシア政府から認定された正規教育機関であるが、(1)(2)(3)(5)は大きく異なる。生徒は華僑子弟中心、授業は英語・中国語で実施。もちろん中国語は必須科目。キリスト教団の関与・支援はない。フィリピンのキリスト教系中華学校は他の国の華僑学校とはかなり異なっている。
中国共産党の在外中国人組織化による影響力拡大戦略
中国共産党は世界各地の6000万人以上と推計される在外中国人を中国国務院華僑事務弁公室(国僑)で統括している(『驚異の華僑ネットワークの真髄を覗く』拙稿最終章ご参照)。 つまり在外中国人を組織して中国共産党の影響力の浸透拡大を世界各地で図っている。当然在フィリピンの大使館・領事館・政府系機関の担当官が国際親善・文化交流・交換留学生促進など様々な名目の活動を行うと同時に裏の活動も行っているであろう。 フィリピンでは教育省の予算不足により公立学校ですら校舎・教員不足が深刻である。文科省から私学助成金が生徒人数分に応じてもらえる日本の私学と異なりフィリピンで私学の運営は財政的に厳しい。キリスト教団の財政支援のない一般の中華学校は中国共産党にとり格好のターゲットであると推測する。老舗中華学校の女性校長の気になる発言の裏には有形無形の中国共産党の影響力があるのだろうか。 以上 次回に続く
高野凌