スーパーGTラストレースのロニー・クインタレッリ「最後の最後に僕らしい走りができた」後任、千代勝正への想い/最終戦鈴鹿決勝
スーパーGTでの活動終了を発表して、最後のレースに臨んだ前人未到の4度のチャンピオン、ロニー・クインタレッリ(MOTUL AUTECH Z)。8番手グリッドからスタートを担当したロニーはアグレッシブな走りでオーバーテイクを見せるなど3つ順位を上げ、5番手で後半スティントの千代勝正にバトンを渡した。レース後のフィナーレでファンに挨拶を終えたロニーが、メディアに質問に答えた。 「昨日の予選はかなり難しかったですね」と、まずは土曜の予選Q1から振り返るロニー。 「ちょっとタイヤの選択だったり、クルマのセットアップ含めて、僕が望んでいるクルマの動きではありませんでした。僕のベストラップのタイムの時は前に2~3台、まだアタックに入っていないクルマがシケインでギャップを空けようとしていて、僕のアタックが台無しになってしまった。すごくもったいなかったのですけど、それがなくても8~9番手くらいの満足できないパフォーマンスでした」 Q1を担当したロニーは、トラフィックの影響でまさかの15番手最後尾となってしまった。だが、4度のチャンピオンに輝いたレジェンドの最後のレースが、そのまま終るはずはなかった。 「昨日(土曜)から今日(日曜)のレースに向けてクルマのセットアップを変えて、昨日はリヤグリップの抜けがあって、1~2コーナーとかハイスピードコーナーで思いっきり100パーセント攻められる自信がなかった。今日、セットアップを2~3点変更して20分間のウォームアップで、アウトラップから2周くらい走って、まだタイヤは温めている段階で、クルマの手応えを感じました。うれしかったですね。たぶん、今シーズン初めて僕に合うクルマのフィーリングで、クルマを信じることができて『今日は行ける』とすぐに感じましたね」 そのレースにはロニーの家族に加え、イタリアからのサプライズの応援が訪れていた。 「実はふたりの妹が(イタリアから)来ることを僕に内緒にしていて、最後のレースを邪魔したくないという思いがあったようで、うちの妻と連絡を取っていたみたいです。昨日、日本に到着して、今朝(日曜日の朝)、ホテルでサプライズで会いました」 「やっぱり、妹たちは今までイタリアで生のライブ配信で僕のレースを見ていて、子供の頃から僕のカートでの努力をずっと側で見てくれているから、妹たちにとっても(スーパーGT活動終了は)すごくショックだったみたいで、『まだまだいけるよ!』『ロニーだけがダメなんじゃないよ!』みたいに(苦笑)。それは妹だからそういうことが言えるんでしょ、と(笑)」 「来てくれてすごくうれしかったですし、もちろん、僕の奥さん、そして息子は今日、野球の大事な試合があったのに休んで鈴鹿まで来てくれたし、息子は最後のフィナーレでも一緒にステージに上がってくれた。妹たちと家族が来てくれて、もちろんすごくプラスアルファの気持ちが入っていました」 レースでは、スタートから前のクルマを攻め、2度のオーバーテイクも見せ、ロニーらしいアグレッシブな走りが見られた。 「そうですね(笑)。やっぱり僕もうれしかった。今年はシーズン中にファンの方からのSNSのコメントを見て、『ロニー、いつもアツい走りありがとう』とか言ってくれていましたけど、『いや、それはアツくないでしょう』、『全然ダメだよ』とか僕の中では思っていた(苦笑)。それでも、僕のドライビングスタイルとか、何年間も僕の走りをずっと覚えてくれていて、ファンのみなさんは応援してくれて、すごいなあと思っていました。それでこの最後の最後、こんなにたくさんのファンの前で僕らしい走りを見せることができて、それが一番うれしかったね」 そのロニーは、改めてファンのパワー、そして大きな声援を受けたニスモフェスティバルについて触れた。 「やっぱり、金曜日の記者会見でも言ったのですけど、僕のスイッチが入ったのは、先週(12月1日)のニスモフェスティバルです。ニスモフェスティバルの前まではすごく寂しい気持ちがあって、活動終了の発表をしてからいろいろ苦しかった」 「それがニスモフェスティバルでは、今まで見たことのないくらいのファンの方から、声をかけてくれたり、一緒に写真を撮りたいと言ってくれたり、ニスモフェスティバルですごくパワーを吸収して、今日のレースもあのニスモフェスティバルからパワーが来ています。すごく元気をもらいました。本当に感動しました。あのニスモフェスティバルがなければ、今日の走りは絶対にできませんでした。やっぱり、スーパーGTはあのようなファンのパワーがあるから、ドライバーもみんな頑張れるし、こんな素晴らしいシリーズができているんだなと。本当に素晴らしいです」 レースでは前半スティントの18周を走り、5番手まで順位を上げてチームメイトの千代にステアリングを渡した。最後の走行を終えてマシンを降りたロニーは、ピットアウトして出ていく千代の姿を、1コーナーの先に見えなくなるまで、自らの目で見守った。 「やっぱり千代選手のあの人柄は本当に素晴らしくて。本当にいい心を持っているドライバーで。彼はずっとニスモフェスティバルの時も一緒に食事をしたりしてきて、僕以上に寂しい気持ちを持っていて、『ロニーともっと一緒に長くやりたかった』と言ってくれたり、とにかく『僕は最後までしっかりサポートをします』と」 「だから、彼がピットアウトしてから1コーナーまで、彼の走りを生で見たかった。彼は本当にすごいドライバーですし、23号車を代表してくれるドライバー。ああいう素晴らしい人柄だからこそ、ああやって見送りたかった。僕はこれで辞めて全部彼に譲るので、彼にすべて引き継いだ瞬間でしたね」 全ドライバーが参加したシーズンフィナーレで、息子と共に登壇して来場したファンに現役最後の挨拶を行ったロニー。最後のレース、そしてフィナーレを終えて、今は寂しさや悲しさ、達成感など、どんな気持ちが大きいのだろう。 「やっぱり、ニスモフェスティバルと一緒ですね。元気いっぱいです(笑)。すごい元気! 今からでも1スティント行けますよ、元気すぎる(笑)」 「まだこうやって取材とかありますし、スーパーGTを引退するということはまだ100パーセントは実感できていないですね。お正月はイタリアに帰るので、そのイタリアから戻ってきたら今までは新しいシーズンに向けて体の準備とか、ちょっとずつ体のプログラムをどうするとか、テストのスケジュールとか内容を計画していましたけど、それがすべてなくなるので、たぶんイタリアから戻ってきたら、もしかしたらその時にいろいろ辛い思いになるのかもしれないですね」 「まあでも、最後の最後まで、ニスモフェスティバルから最終戦まで、走りを含めてやり切ることができて、助かりました。これでまた、元気なまま次のことができると思います」 冗談も交えながら最後のレース取材に応えたロニー。その表情には悲しさや寂しさはまったく見られず、今年一番とも言える達成感がみなぎっていた。 [オートスポーツweb 2024年12月09日]