目標タイム届かず涙。インタビューでもボロ泣き……念願のスーパーフォーミュラ初走行を果たした小山美姫が背負っていたモノ
文字通りの“大粒の涙”だった。念願のスーパーフォーミュラ初走行を終え、集まったメディアの取材に応えた小山美姫は、F4時代からの顔馴染みの記者たちに囲まれ感極まった。 ダンディライアンの牧野&太田が他を寄せ付けないタイム|スーパーフォーミュラ公式/ルーキーテスト:2日目午後タイム結果 「こうして囲んでくれている人たちも、F4の時からいるから……。何のインタビューされてるんだろうと思ったら、『SFのインタビューなんだな』って」 日本を代表する女性ドライバーのひとりとして、FIA F4、Wシリーズ、フォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップなど、様々なシングルシーターカテゴリーで経験を積んできた小山。今季は特に“箱車”カテゴリーにも幅を広げ、スーパーGT・GT300クラス、スーパー耐久、ランボルギーニ・スーパートロフェオでの活躍でも評価された。スーパーフォーミュラには今季Jujuが日本人初の女性ドライバーとして参戦し歴史を作ったが、小山も国内最高峰のフォーミュラカテゴリーに乗りたいという思いを公言してきた。 そして今回、小山にチャンスが巡ってきた。シーズンオフ恒例のスーパーフォーミュラ公式/ルーキーテストにKids com Team KCMGから参加することになったのだ。小山は8号車で2日目の走行を担当し、8号車のレギュラードライバーである福住仁嶺や初日に走行した関口雄飛らにアドバイスをもらいながら、ランプランを進めた。 小山が目標に設定していたのは1分37秒台にタイムを乗せること。目標タイムを目指すためチームも発奮し、「そこは私が(ドライビング面で)いけてないだけだから、クルマはもう十分だよ」と小山が恐縮するほどだったという。 結果的に小山のベストタイムは1分38秒078。同じくSF初走行となったジェームズ・ヘドリーやファン・マヌエル・コレアと同水準のタイムだが、本人は目標にわずかに届かず悔し涙を流したという。 「自分の与えてもらった環境と、自分の築いてきたここまでのプロセスをまとめたら、7秒台(37秒台)だなと思っていました」 「終わった直後は、7秒にほんの少しだけ届かず、悔しくてひとりで涙が出ました(笑)。『ありがとうー!』の涙と、『くそー!』の涙と(笑)」 「今回は本当に最初で最後だと思い、自分の親も呼んでいました。ファンの人や大切な人も仕事を休んで見に来てくれたり。最後はちょっと悔しかったけど、こんなカテゴリーで走れるに値する人間ではないと思っていた中で、こうやって走れたことは感謝しかないです」 今回のテストが“最後の機会”だと覚悟していたという小山だが、「でも乗ったらレースに出たい(と思う)し、もっと乗りたい。今は(トップから)2秒落ちで、ここから詰めるのが大変だと思うので、ここからが本当の勝負だと思います。そういう過程を刻んでいきたい」と意欲を見せた。 そして前述の通り取材中に感極まったわけだが、そこに去来する思いについて聞くと、再び涙を流しながら次のように語った。 「ここまで上がってくるドライバーは本当に色んな苦労をたくさんしてきているので、自分としてはそこまでの経験もしていないのに若干申し訳ないという気持ちもありました。ただ、ここまで機会を作ったくれた人もいるので。そういう人たちに恥をかかせないような走りをしないといけないという思いもありました」 「ここ(SF)に乗るのって、難しいじゃないですか。今回テストに参加している人にも迷惑をかけちゃいけないし、上を目指す人たちにも『そんなんで上がれちゃうんだ』って思われたらまずいですし」 「一番は、この機会を作ってくれた人に後悔してもらいたくないという思いでした」 「でも乗り終わって、次生さんが『こんなタイム出るとは思わなかった』と言ってくれて嬉しかったし、エンジニアさんも『今回だけなのはもったいない』と言ってくれて、嬉しかったです」 「色々な人が関わってくださったので、関係者の皆さん、スポンサーさん、ファンの皆さん、ここまで長く応援してくれた人がいるので、その人たちが自分の走りを見てどう思っているか分かりませんが、ひとまず自分のやれることをやれたかなと思います」
戎井健一郎