ゴア米元副大統領が見つめる『不都合な真実』から「10年後の世界」
●「われわれの家はここだ」
何がゴア氏をここまで地球環境の問題に駆り立てるのか。そのカギとなる言葉が劇中にある。 「われわれの家はここだ」 セリフは「火星にすぐに移住できるわけではない」と続く。インタビューで、ゴア氏は自身に子どももいるし、孫もいると切り出し、こう語った。「彼らの将来をいま何とかしないと守れない。空気がない空間に、冷蔵庫のような空間に閉じ込めて生きるなんて考えたくない。私たちには地球しかない」。 自分たちの後の世代に住みよい地球を残し、人類が生き残るためには時間がないとも訴える。「これはいま決断しなくてはいけない、道徳的な問題。われわれがいま生きているうちに何とかしないと、もう将来がなくなってしまう。われわれの次の世代がなくなってしまう」。
●二つの「大きな変化」
前作が公開されてから10年。その後の世界の動きをゴア氏はどう見つめているのか。その間、二つの大きな変化があったとゴア氏は語る。 一つ目は「異常気象」だ。「台風、豪雨、氾濫、干ばつが非常に頻繁に起こるようになっている。氷が溶けて海面上昇し、母なる大自然が声を上げている」。劇中でもニューヨークの冠水をはじめ世界で起こった異常気象が取り上げられている。 二つ目は、この地球環境の問題に「解決策が見い出せたこと」だという。「ソーラーとか風力とか、非常に安く使える電力。そして電気自動車に蓄電池の能力も上がっている。いま道具はそろっている」。ゴア氏は、再生可能エネルギーに比べて二酸化炭素を多く排出する火力発電、特に石炭などによる化石燃料を問題視している。今後のエネルギーバランスの中心を担うのは「太陽光と風力発電が一番いい」との見方を示した。 CO2排出の抑制効果が高い電源としては、原子力発電も考えられる。原発について、ゴア氏はどう考えているのか。「アメリカでは原発は一番高いエネルギー。原発を使うにしても、できれば、新しい安全な形で安く使える電力になるといい」と指摘した。