フーディーたちが大絶賛! 日本の自然を五感で感じる一皿を作る期待の若手料理人の世界観に迫る
本岡:「ビオス」の顧客の半分以上は東京のお客様で、ずっと応援していただいたので、東京の近くでやりたいなとは思っていました。それから、自然がやはりルーツなので、畑ができて、自然が身近にあるようなところでしたいなと考えていた時に、この場所と縁がありました。妻の祖父の家なんですが、代々造園業を営んでいて、妻の両親の代で閉業させるとなって、片付けを手伝いに来たんです。来てみると、日本家屋にしては天井が高くて、部屋も広くて、椅子に座っても圧迫感がない。レストランとして使いたいと思って話をしたら、ぜひぜひということで、そこから計画を練りはじめました。 本田:川口、イメージなかったでしょ。俺も、最初、浜田岳文(食べロググルメ著名人)から川口にすごい店ありますよって聞いた時、川口?と思ったぐらい、イメージなかった。意外に、東京の人って、この辺りのイメージがない。 本岡:最初は全く、イメージがなかったです。来てみると、東川口は東京のベッドタウンで、駅周辺に繁華街がなくて、すごく穏やかな感じです。落ち着いて店をやるのにはいい場所かなと思い、ここに決めました。自分のルーツである自然も身近にあります。
本田:この辺でも結構いろいろ採れるの? 本岡:野草とかたくさんあります。近くの池の周辺にはヤブカンゾウという野草があるんですけど、それがアスパラガスみたいな味の濃さと、ちょっとねっとりした、オクラみたいな食感があって、すごくおいしいんです。竹林もあって、たけのこもたくさん取れます。
本田:これも運だよね。身近に自然があるというのがさ。 本岡:本当に運が良かったとしか言いようがないです。たまたま妻の実家が造園業で、果樹とかも植えていた。 本田:まさにレストランをやるためにあるようだね。今までの話を聞いていると、レストランをやるためのいい出会いがあって、ここに導かれてきたみたいな感じなんじゃないの。 本岡:東京にいたら、最初に料理を考えて、この素材はここから引っ張ってこようとなると思うんです。東川口や静岡でやっていたからこそ、今、目の前にこの素材があるからこの料理をしようというように発想が逆になった。 本田:畑を見て、それから何を作ろうか考える。 本岡:この野菜はまだ熟れてないから、青い風味を生かしてソースにしようかなと思う。そういう暮らしをしていると、なんか生きているという感じがして、ナチュラルに生活しているのが身の丈に合っていると思います。 本田:子供の頃から慣れているわけだからね。無理してやっているわけでもない。目の前に野菜や野草があって、フレッシュで、香りもいい状態で供することができるというのはなかなかないよ。今育てているのって何種類ぐらい? 本岡:年間通すと野草を含めて30種類以上。野菜全部を作りたいわけでなく、業者から買うものもあります。ジャガイモなどのイモ類は、収穫して少し寝かせた方が甘みが出て、取れたてが重要ではないのでほぼ作りません。新鮮さが大事なもの、例えば生のカブはかじった時にナシのような甘みがしますし、そら豆は生で食べられるんですが、業者から買うものではそうはいかないので、作るようにしています。毎年新しい品種に挑戦しては失敗したり、成功したりしていて、それが楽しいと思いながら作っています。