フーディーたちが大絶賛! 日本の自然を五感で感じる一皿を作る期待の若手料理人の世界観に迫る
本田:この自家菜園は2人でやっているの? 本岡:畑は完全に2人でやっています。果樹とかは義父と義母にある程度、面倒を見てもらっています。
本田:東京でレストランやるとさ、みんな忙しいから畑の時間が取れない。でも、こっちだとある意味ゆっくりできるから、その時間が取れる。ランチやって、夜も1回転。ディナーは6時からだから、終わるのは10時。11時ぐらいには片付け終わるの? 本岡:10時には片付け終わっています。早ければ9時半に。 本田:家も近いの? 本岡:家は隣です。なので、休みの日も朝、水撒きしたり、ちょっと畑を手入れしたりしています。 本田:労働の感覚も全然違うだろうね。都会だと30分ぐらいかけて通勤して、仕込みを始めて、昼やって、夜やって。遅くまで片付けにかかって。寝るのは1時ぐらい。次の日も朝から通勤して。そう考えるとここはすごく豊かな生活だよね。 本岡:昔の人のように朝早く起きて、畑仕事をして、昼ご飯を準備して、お客様がいらして、食事を出して、少し休憩した後、また畑仕事をする。料理も畑も生活の一部のような感じで働いているから、労働という感覚があまりないなと思います。 本田:楽しんでやっている。新しい料理人のあり方かもね。 本岡:よく都会にいる友達のシェフと話すんですけど、これで商いが成り立てば、人生、すごく豊かだと思うって。お客様に来ていただけなければ、ただの自己満足のお店で終わってしまうとは思っています。
人生のさまざまな出会いや経験がつながり、生まれたレストラン
本田:お客さんは、最初から来てくれている? 本岡:最初から来てくださったのは、やはり「ビオス」時代のお客様です。僕がシェフになってから「ビオス」のリピート率がすごく良くなったんです。月に1回は必ず来るお客様が二十数組いらっしゃいました。
本田:それはすごい。なんでそうなったの? 本岡:毎日のように料理を変えていたからだと思います。不安だったからというのもあるんですけど、常に生み出し続けないと成長が止まっちゃうと考えていました。「ビオス」も野菜を作っていましたから、ぜいたくに野菜を使えて、毎日、一つの野菜から何種類も料理を作っていました。料理漬けの3年間で、そこでどれだけ料理の幅を貯金できるかが大切だと思っていたんです。お客様も1週間に1回、2週間に1回必ず来る方々がいらして、その方たちと勝負するみたいな感覚ですよね。メニューの中には失敗作もあったり、まとまりが悪いと思うものもあったりしたんですけど、そこも踏まえてお客様に育てていただいたと思っています。温かい目で見守ってくださったお客様は、今でもこちらに来てくださいます。 本田:それは強いな。だから、東京から行けるとこだったら、別にどこでやってもお客さんが来てくれていたんだ。そんなお客さんを23歳から26歳にかけて掴んだというのがすごいね。 本岡:環境が良かったと思います。23歳で東京でやっていたら、たぶんくじけていたと思います。畑があって、山野草があって、オーナーにも本当に自由にさせてもらいました。料理に関しては、一切、口を出されたことはありませんでした。 本田:そこまで頑張ったから、お客さんも付いてきてくれた。いきなり、ここでやってもお客さん持ってないときついもんね。知ってもらうまでに時間が経っちゃう。 本岡:広告費や宣伝費も一切なく、本当に何にもしてないんです。SNSもあんまり更新していないですね。本当に口コミで、昔ながらでやろうというので、予約も電話のみです。「ビオス」のオーナーが言っていたことは、地方でやるには損益分岐点をどれだけ下げられるか。ですから、固定費をできるだけ削減して、その分、お客様に還元したいと思っています。それが功を奏したと思います。