「あきらめなかったからチャンスが来た」パリパラ五輪車いす女子テニスで悲願金メダルの上地結衣を支えた“あの”レジェンドのアドバイス
高校3年生で臨んだ2012年のロンドンパラリンピックではベスト8に進出。銅メダルを獲得したリオデジャネイロ大会を経て自国開催の東京大会で金メダルを狙うもデフロートに完敗した。何かを変えなければとの思いから、昨年の冬には車いすテニス界のレジェンド、国枝慎吾さん(40)のもとを訪ねている。 ちょうど「もう十分にやりきりました」という言葉とともに、国枝さんが現役を退いた直後だった。上地の方から「私とテニスをしてください」と連絡を入れて、実現させた練習を通じて国枝さんの多彩なサーブを伝授された。 ダブルフォルトが「0」だった決勝に象徴されるように、身長143cmと小柄な上地にとってはサーブのバリエーションが増え、さらにサーブからのポイント取得率も高まった効果は絶大だった。ベースラインで辛抱してラリーを重ね、根負けした相手のミスを誘う戦術をしっかりと確立させた上地は、今年7月のツアーでデフロートにストレート勝ち。連敗を「28」で止めて、4度目のパラリンピックを迎えていた。 師匠でもある国枝さんがテレビ解説を務める眼前で、前日5日の女子ダブルス決勝では田中愛美(28、長谷工コーポレーション)とのペアで、東京大会を制したデフロートとアニク・ファンクート(34)組を撃破。車いすテニスが正式採用された1992年のバルセロナ大会から続いてきた、オランダ勢による女子の単複完全制覇を阻止した。 一夜明けたこの日は女子シングルスでも頂点に立ち、2008年の北京大会から男子シングルスを4連覇した国枝さんも経験していない二冠も達成。放送席の国枝さんにも手を振った新女王は、全仏オープン決勝も行われるローランギャロスのセンターコート、フィリップ・シャトリエを埋めた大観衆をお互いのプレーで魅了した、四大大会の女子シングルスで15連覇中のデフロートへの感謝も忘れなかった。 「もちろんディーダ(・デフロート)への声援もすごくたくさんあって、でもそれが決して自分にとってマイナスになるのではなくて、彼女を後押しする声援、それから彼女がいいプレーをするたびにあがる声援も含めて、やはりディーダと2人で決勝のこの舞台を作ったと思うので。今日は本当にすごくいい試合ができたと思っていますし、彼女も私が泣いてちょっと動けなくているところに来てくれて、祝福の言葉をかけてくれました。ディーダとこの舞台で戦えて、本当によかったと思っています」 上地自身も四大大会で8回の優勝を誇る。その半分の4回を全仏オープンで達成するなど、相性のいいクレーコートで悲願を成就させた上地は、授与された金メダルにキスした表彰式でも再び感極まった。もちろん美しき勝者の瞳は涙越しに、パラリンピックの二冠女王の肩書きが加わる今後の戦いもすでに見つめている。
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