東京五輪エンブレムの再公募。透明性のある選考方法はどうあるべきか?
グラフィックデザイナーの佐野研二郎氏が作った2020年の東京五輪・パラリンピックの大会エンブレムが1日、白紙撤回され、再び公募し直しされることになった。武藤敏郎・事務総長は、「公募の方法についてはこれから考える。より開かれた透明性のある選考をしたい」と語ったが、どういう公募、審査方法を採用すべきなのだろうか。 電通マン時代に日韓W杯招致にかかわり、現在も、スポーツコンサルティングとして活躍中のスポーツ総合研究所の広瀬一郎氏は、「そもそも大会コンセプトがまだ発表されていない。招致の際のコンセプトや、ビジョン骨子のようなものは、大会コンセプトとは別もの。どんな五輪にしたいのかを決めていないのに、エンブレムの作成者は、そこにメッセージを込めようがないでしょう」と、苦言を呈する。 大会スローガンが正式に明らかにされていない現状について問題視する声は広瀬氏だけではない。招致活動では、「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」というスローガンが発表されていた。現在、大会のビジョン骨子として「スポーツには、世界と未来を変える力がある」とした上で「1964年の東京大会は日本を大きく変えた。2020年の東京大会は『すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)』『一人ひとりが互いに認め合い(多様性と調和)』『そして、見て未来につなげよう(未来への継承)』を3つの基本コンセプトとし、史上最もイノベーティブで世界にポジティブな改革をもたらす大会とする」とあるが、これはビジョン骨子であって、世界へ発信していく東京五輪のスローガンではない。 確かに数々の盗用疑惑をかけられ、「一般国民の理解を得られなくなった」と、使用中止となった佐野氏のエンブレムも、デザイン性には、優れていたかもしれないが、メッセージ性は感じられなかった。一部では、招致活動時に使われた5色の桜の花をリースの形に彩ったエンブレムが再評価されているが、これは一般公募で、大学4年の美大生が応募した作品。本来、リースには「復活」や「回帰」の意味があるため、そこに東日本大震災からの復興の意思が込められていた。エンブレムは、デザイン性も重要だが、メッセージ性も、非常に重要で、広瀬氏の指摘通りに、大会コンセプトを正式に発表するよりも、先に、その象徴であるはずのエンブレムを公募するのもおかしな話だ。