他人の目が気になる...人間関係の疎外感から解放される“体へのアプローチ”
疎外感を抱くのは、「身体的つながり」を感じられないから
他人の目が気になって、自分を装ったり、周りを伺ってしまう。 これを心理学的に見ると、「他人から低い評価をされて、嫌われたり笑われたりするのではないか」という「疎外感」に対する恐れだと捉えることができます。 この場合の疎外感は、本人が想像の中で勝手につくり上げたものがほとんどで、実際には、他人は全く気にしていなかったり、もっとフラットな目で見ている可能性のほうが高い。それにも関わらず、「疎外感」を必要以上に抱いてしまう要因として、他人との「身体的なつながり」を感じられていないことが挙げられます。 身体的なつながりとは、言葉にするのが難しくても「あの人は大丈夫」「見守ってくれている」と思えることです。こうした安心感やつながり感は、より動物的な感覚です。頭だけで理解しようとすると、虚しさに押しつぶされるかもしれません。 実際にカウンセリングの場で、「頭ではわかっているけど、そうなれない」というもどかしさがストレスとなり、心身を壊してしまった方を何人も見てきました。ここでは、大切な存在から尊重されていることを「感覚」ありきで、感じられるのが理想なのです。 では、体のどの部分で「人とのつながり」を感じられるのでしょうか? これには、先ほどフォーカスした「胸」が大きく関わってきます。相手からあたたかくふわーっとした気持ちを受け取るイメージができたら、さらにこちらから相手に投げかけて、自分を受け止めてもらう意識を体に結びつける必要があります。
胸を開いてあたたかい気持ちを相手に注ぐ
まずは、胸骨の上端とみぞおちを結んだ線のちょうど真ん中、ここから少し奥に入ったところに丸くあたたかい「ムネ」の意識を持ちます。 ムネは「あなたと仲良くなりたい」「あなたのためになりたい」といったあたたかな気持ちがふんだんに含まれる場所でしたね。 この自分のムネから、周囲の人のムネに、放物線を描くように「気」を渡すようなイメージを持ちます。これは対面にいる人に限りません。 手のひらを使って、ほぐれるように、あたたかく、ふわーっとした感覚を引き出すようにさすります。その柔らかな感覚が、相手に注がれるイメージです。このイメージがうまくできない人は、胸を開く、つまり心を開くことがしばらくできていなかった証拠かもしれません。 動物的な本能として、無防備な体の前側は守りたくなるのが当たり前ですが、これを理性の部分で再教育していきましょう。 実践してみると親しい人にはできるけど、苦手な上司にはイメージが湧きにくい。むしろしたくない、という感覚が生まれるかもしれません。これはまさしく、特定の人に「心を開きたくない」と思っている証拠です。嫌なことをされたとか、怖い思いをした人と似ているとか、何らかの経験が紐づいている可能性があります。 こういった意識を新しく上書きできるのが、この身体的アプローチの特徴でもあるのです。前述の「相手を胸で受け止める感覚」、そしてここでお伝えした「自分から相手に投げかける感覚」、この相互の結びつきが得られて初めて、本当のつながりを心から感じることができるはずです。
大沼竜也(鍼灸師)