「ターミナル」が10周年 CEOに聞く、ファッション業界DX化の現在地
⎯⎯ファッション業界DX化の現状について、伊奈さんの見解を教えてください。 ファッション業界って、中小大手に関係なく、「情報システム部」「IT部」といったデジタルチームのプレゼンスがまだまだすごく弱いですよね。それらの部署が適正に評価されて、優秀な人材が増えていかないと、本当の意味でのDX化は進んでいかないと思います。 ⎯⎯「本当の意味でのDX化」というと? 私たちも事業提供者として日々の業務の中で強く意識していることですが、社内システムやツール活用を通じて部門間の連携を強化し、業務パフォーマンスを向上させる、ということですね。ファッション企業でDXを謳っているところって、実際にはEC部門の強化くらいまでしかできていなかったりするじゃないですか。まだまだ「デジタル化を通して本質的に何をやらなければいけないか」というところまで踏み込めている企業が少ないと思います。 ⎯⎯DX化が進んでいない要因としては、企業の経営陣の考えがアップデートされておらず、新しい技術の導入に及び腰になっている、ということも挙げられそうですね。 それは確実にあるでしょうね。ターミナル導入の際にも、現場はやる気でも50~60代の責任者が絶対に首を縦に振らないことって往々にしてあるんですよ。でも、これは仕方ないことかなと。その人からしたら、定年退職間際に得体の知れないサービスを自分の判断で導入して、失敗したらキャリアの最後に傷がつくわけですからね。ただこれについては、5~10年もしたら自然と上層部が入れ替わるので、時間が解決してくれる部分があると思います。 ⎯⎯ファッション業界で今後DX化を進めていくためにはどういったことが必要になってくると思いますか? オンラインツールなどを導入して満足するだけでなく、それをどのように運用していくのかを真剣に考えなければいけないと思います。例えば、世界的にも有名な某大手クラウドサービスはセットアップや運用もかなり大変なんですよ。だから、世の企業の中にはそれを浸透させるためのチームがあったりするんです。ファッション業界でも、そういったDX化を進めるための努力を企業単位でしていく必要はあるでしょうね。体重計を買っただけでは、体重は減りませんから。 (聞き手:村田太一)