「ターミナル」が10周年 CEOに聞く、ファッション業界DX化の現在地
“コロナ特需”で導入ブランド3割増、SDGsや「2025年の崖」も追い風に
⎯⎯会社としてのビジネスにおけるターニングポイントは? コロナ禍です。やはり対面での展示会ができなくなったことで問い合わせがものすごく増えて、導入ブランド数もコロナ禍以前と比べて約3割増えました。ターミナルにとっては追い風になりましたね。 ⎯⎯コロナ禍が収束しても勢いは継続していますか? “コロナ特需”で急増していた問い合わせの勢いは元に戻りました。これは投資の優先順位の話で、コロナが落ち着いてからは、実店舗の出店などに注力するブランドも増えたので仕方のないことだと思います。ただ、一度ツールを導入してくれたブランドが利用をやめるといったことはなかったので、サービス自体の満足度は維持できているのかなと。 ターニングポイントの話でいうと、ファッション業界におけるSDGs推進の流れもターミナルにとってはプラスに働いたと思います。 ⎯⎯展示会で大量に用意していた紙の資料が不要になることで、ペーパーレスに繋がりますよね。 それも大きな要因の一つですね。最近、環境に配慮していることを理由に外資ブランドがターミナルを導入してくれるケースが増えてきたのは、本国から紙の資料を廃止するよう要請があったという事情もあるようです。 ⎯⎯2018年には経済産業省が「DXレポート」と呼ばれる資料の中で、日本がDX化を推進しなかった場合、2025年から年間で最大約12兆円もの経済損失が発生することを「2025年の崖」と表現しました。 これもターミナルにとっては良い方向に作用しました。「2025年の崖」問題は今まさに多くの企業やブランドが直面している課題だと思いますが、ターミナルを利用する多くの企業からも社内システムの刷新に億単位の費用をかけて対応しているという話はよく聞きます。しかも、コロナ禍が例として挙げられるように、働き方が変わればそれに合わせて都度システムも変えていかなければいけない。その度に高い改修費用をかけるのって結構な負担ですよね。そんな中で、ターミナルは簡単に言えば「サブスク」みたいなビジネスモデルなので、月額利用料を支払えば自由にツールを使えて、時代や働き方の変化に応じた機能アップデートも全てターミナルに任せられます。国内でどこよりも長くオンライン展示会ツールを取り扱っている信頼もあり、導入ブランド増に繋がっているようです。 ⎯⎯ターミナルでは、2023年に一部機能の無料開放をスタートしました。どんなサービスを無料で提供しているのでしょうか? 商品情報などを簡潔にまとめたラインシートとオーダーシートの作成、あとアポイント管理という大きく3機能ですね。従来通りのアナログな方法で展示会運営をしている企業やブランドでは、オーダーシートをエクセルで作っていたり、ラインシートをイラストレーターで作成していたりするところが多いんですが、それってすごく非効率だと思うので、「ターミナルを使えばもっと簡単にできますよ」というのを無料機能を通して体験してもらっています。最も安い月額2万円のプランで受注、集計機能も利用できるようになるのですが、無料機能を利用した顧客の多くが有料ユーザーになってくださるので、無料機能は新規クライアントのエントリーとして一定の手応えを感じています。 ⎯⎯今後も無料機能の提供は続けていく? 続けていきますし、なんなら2024年中に無料機能範囲の拡大まで検討しています。具体的には納品書、請求書の作成までフリーでできるようにしようと。受注、集計を除いた展示会の全てのプロセスをフリープランでできるようにするだけでも十分に業務効率化は実現できますが、「折角なら有料プランを活用して全てターミナルに任せてみよう」と感じてくれる人が更に増えてくれたら嬉しいです。 ターミナルの強みはプロダクト自体もそうですが、契約後にカスタマーサービスチームがしっかりと運用をサポートできる点も挙げられると思うので、最終的には無料プランの中に期間限定のサポートまでつけて、サービスの利便性を更に多くの人に伝える体制を整えていきたいですね。