「ターミナル」が10周年 CEOに聞く、ファッション業界DX化の現在地
「体重計を買っただけでは体重は減らない」ファッション業界でDX化を進めるために必要なことは?
⎯⎯ターミナルは5月でサービス開始から10周年。これまでを振り返って、率直な心境を聞かせてください。 おかげさまで導入ブランドは1000を突破しましたが、このうち75%がターミナルからの働きかけではなく、ターミナルのサービスに興味を持ってお声がけくださったお客様なんです。特に既存の顧客からの紹介や口コミがきっかけとなっているケースが多く、ターミナルを愛してくださっている方々には感謝しかないですね。 ⎯⎯ターミナルが顧客から愛されている理由は? 顧客と密なコミュニケーションを図っていることだと思います。10周年を迎えるにあたってステートメントを作成したんですが、そこで掲げたのが「Always your buddy」(僕たちはいつも仲間だよ)という言葉。サービス提供者と顧客という立場ではありますが、その垣根を越えて困ったことがあればなんでも相談に乗るし、楽しいこともたくさんするし、仲間のような存在でいたいという想いを込めています。このスタンスを創業時から継続して関係構築できているからこそ、自信を持ってターミナルをオススメしてくれているのかなと。 ⎯⎯なんとなくですが、こういったIT系の企業はもっとドライでビジネスライクなイメージがありました。 ターミナルのような月額制のサービスでは利用継続率というのは重要な経営指標なので、そのあたりはここ10年でだいぶ変わってきているとは思います。サービスを利用する側が気を許せる会社と契約したいと思うのは当然だし、ターミナルとしても気持ちよくコミュニケーションをとりながら仕事できることが一番。やっぱり結局は人間同士の関係性なので、長くお付き合いできるような距離の取り方というのは会社として大事にしている部分ではありますね。 ⎯⎯2021年に国内メディアが実施したファッション業界向けアンケートでは「WEB展示会システムとして最も利用されているサービス」にターミナルが選ばれました。 非常に有り難いです。他社ツールと比べ、実際に展示会でオーダーするバイヤーからの評判が良いというのはよく耳にしますね。ホーム画面に今オーダーできるブランドが一覧表示されるなど、利用者の動線に配慮したUI(ユーザーインターフェイス)が好評みたいです。 あとはターミナルが最も早くこういったサービスを始めていたことで、業界認知が進んで利用が拡大したという先行者メリットによるものかなと。 ⎯⎯ターミナルの直近の課題を教えてください。 課題はファッション雑貨、スポーツなど専門店領域の強化です。最近、「ニューエラ(NEW ERA)」や「キーン(KEEN)」、「ポーター(PORTER)」などのブランドでも導入が始まりました。これらのブランドは大手小売企業や代理店との取引が多く、その分卸売における業務課題も多いです。複雑な商流やビジネスルールもあることから、これまであまり注力してきませんでしたが、プロダクトとサービスの進化により導入可能な企業も増えてきました。ただ、同じ定番品を分けて納品してほしいとか、商品によって掛け率を変えてほしいといった独自の要望も多いので、この辺りのシステム整備が急務だと考えています。 ⎯⎯外資系ブランドのターミナル導入が増えているということでしたが、サービスの海外進出については? 英語への言語切り替えと外貨登録に対応しているので取引自体はしてもらえるんですが、本格的な海外進出は考えていません。そう考える一番の理由は、商習慣や言語まで対応する必要が出てくるから。そのほか、国内だけでもシェアを拡大できる余地がまだあるということも挙げられます。最近では韓国ブランドの日本進出も増えているので、まずはアジアから、といったエリアごとに考えるケースはあるかもしれません。 ⎯⎯20周年に向けて、ターミナルはファッション業界でどんな存在でありたいと考えていますか? 世の中の半歩先を行くサービスであり続けたいですね。僕はずっと「新しすぎることはしない」と言い続けているんですが、それはターミナルが業務用サービスだから。業務用サービスというのは日々の業務を便利にするためにあるべきなので、今すぐ活用できる機能でないと意味がないと思うんです。例えば、最近では最先端のテクノロジーで生成AIも話題ですが、これについても現状は踏み込むつもりがありません。物流とか決済とか、インフラとしてもう少しAIが一般化してきたら「半歩先」のタイミングで導入しようかなと。そのために、我々は常に新しい情報を追い続けなければいけないと考えています。