新興国向け「マイルドハイブリッド」の時代が始まる 2016年クルマ業界展望
そこで、マイルドハイブリッドのモーターをトランスミッションより後ろに付けて、トルク抜けをモーターでカバーさせる方法を取りたい。変速の間エンジントルクが車輪に伝わらない時間をモーターが駆動するのだ。そうすれば現在のAMTの問題が一気に解決し、高信頼性と高効率、低コストの全部が手に入る。 想定されるクルマは、常識的に考えてジアコーサ型の横置きFFなので、モーターはデフの入力側にリング型のものを採用することになる。となればリニアモーターになるだろう。制御はホイールの駆動トルクを計測してやればいいので、トラクションコントロールに増設する形で組み込めるのではないか。ECUもトラコン用を使えそうだ。 もっと高級なシステムにしたければ、リニアモーターの代わりにインホイールモーターをふたつ使う。それなら旋回制御にも使えるし、曲がっている間イン側のホイールに回生させることもできるのでエネルギー効率を更に上げることができるだろう。とは言え、基本はやはり安価に抑えなくてはならないので、筆者はリニアモーター方式を支持したい。特に先に掲げた4つの項目の原則に則ればなおさらだ。 このシステムなら全ての項目でほぼ満点を取れるはず。高いエネルギー回生効率に加え、エンジンが苦手な領域でモーターが協調介入することで「実用上でエコ」を満たし、3気筒のレスシリンダー設計や、機械的にはマニュアルトランスミッションに油圧アクチュエーターを付けただけというAMTによって「シンプルで軽量」を満たす。 ローコストという部分については直噴インジェクターと可変吸気機構が若干抵触するかもしれないが、すでにスズキがインド工場で現地向けエンジンに採用していることから、コスト面で射程距離に収まったと筆者は見ている。そのコスト増加分は、安価なAMTの採用によって十分埋め合わせできるはずだ。そしてリニアモーターを除く全ての構成要素が実績のある物ばかりで、かつ新興国での整備も難しくないから「信頼性と整備性」でも優秀である。