新興国向け「マイルドハイブリッド」の時代が始まる 2016年クルマ業界展望
「バッテリー容量への依存」を止める発想
ハイブリッドには柔よく剛を制する発想の転換が求められる。ポイントを整理しよう。 ・実用上エコであること ・シンプルで軽量であること ・ローコストで汎用性が高いこと ・信頼性と整備性に優れること そうなると、一度バッテリーの容量に頼ることを止めなくてはならないだろう。そういう意味ではやはり電力量への依存が低いマイルドハイブリッドこそが次世代パワーユニットとしてふさわしく感じる。またそれにふさわしいトランスミッションも一緒に考えるべきだろう。 まず最初に思いつくことは、バッテリーに代えて「キャパシター」を利用することだ。ハイブリッドにおけるキャパシターとはコンデンサーのことで、電気を化学エネルギーに変換して貯めるバッテリーと異なり、「電気のまま貯める」ことができる。変換しないから損失がずっと少ない。回生エネルギーを効率よく貯められるのだ。 問題点は容量の少なさで、例えばマツダがエネルギー回生システム、i-ELOOPに採用しているキャパシターの容量は約6.98Whで、プリウスのバッテリーの0.54%しかない。しかしその分、エネルギーを貯める効率は10倍以上という特徴がある。ストップ&ゴーが頻繁な日本や、道路が未整備で慢性的に渋滞の多い新興国で能力を発揮しやすいシステムである。
マイルドハイブリッドは、主体であるエンジンを、可能な限りモーターがサポートするという考え方のシステムだから、エンジンが高効率であることは絶対条件だ。そのためには気筒あたり容積が重要な意味を持つ。その値は450ccだ。 これより小さいと容積あたりの表面積が増えて熱損失が増えるし、これより大きいと火炎伝播距離が伸びてノッキングのリスクが高まり、その結果、点火タイミングを遅らせて運転する時間が増えて効率が激減する。気筒排気量が450ccということは、ボアとストロークがイコールのスクエアエンジンだと仮定し、ボアの半径をRとすれば「2πR^3=450」という式が成立する。ボア径83mm、ストローク83mmになる。 気筒排気量が450ccなら3気筒で1350cc。このエンジンを低速型にセッティングして1500rpm付近で最大トルクを発生するようにし、直噴と可変吸気で高圧縮比・高膨張比化すれば、最先端の効率を達成することが出来るはずだ。BセグメントにはNAで、Cセグメントには過給して使えば台数も稼げる。 エンジン回転を上げたくないので、これと組み合わされるトランスミッションは高効率でギヤ比幅(レシオカバレッジ)が大きくなくてはならない。もちろん新興国でも売らなくてはならないから、高価なDCTや、整備の難しいCVTやトルコンステップATは使えない。常時低回転を維持するという目的を達成するためには、マニュアルトランスミッションで運転者に変速タイミングを任せたくない。自動でぽんぽんギヤを上げて行かなくてはエコにならないのだ。となれば消去法で「多段AMT」にしたくなるわけだが、AMTは変速時に長時間トルクが途切れて、特に加速時につんのめるような不快感が問題だ。