視覚障害者の生活を支える盲導犬。ボランティア不足解消が喫緊の課題
「手伝いましょうか?」の一声が、誰ひとり取り残さない社会につながる
――盲導犬への接し方が分からないという人もいるかと思います。接し方について教えてください。 奥澤:犬に接する必要はありません。盲導犬を見かけると、触る、口笛を吹く、食べ物をあげようとする方もいるかもしれませんが、盲導犬の気を引くようなことは避けていただけるとうれしいです。 盲導犬は人がとても好きなので、初対面の人でも友好的に接してしまいます。それが段差や交差点の近くだったら、思わぬ危険につながるかもしれません。 彼らの仕事を妨げないようにそっと見守ってあげてください。 ――盲導犬と視覚障害者が、今より過ごしやすい社会を目指す上で、必要な一人一人の行動はなんでしょうか? 奥澤:視覚障害者や盲導犬など、普段あまり接する機会がない人がいざ目の前にしたとき、どうすればいいか分からないのは当然だと思います。しかし、受け入れ拒否のように「分からないから拒む」というのは、残念に思います。 もし交通量の多い交差点で盲導犬を連れている人や、白杖を手にしている人を見かけたら、ぜひ自ら「何かお手伝いしましょうか?」「お困りごとはありませんか?」と声をかけていただきたいです。 声をかけ、コミュニケーションが生まれることで、初めて視覚障害者にも配慮された社会が広がっていくと思います。
編集後記
「接し方が分からないからこそ関心を向け、自ら関わってほしい」。奥澤さんの言葉が心に響いた取材でした。 また、本記事にはないエピソードではありますが、取材中、ハッとしたのが、タッチパネルの話でした。コロナ禍を経て、タッチパネルでの注文や決済が増加しましたが、なかには視覚障害者には利用できない設計のものもあるそうです。 誰かにとっての便利は、誰かにとっての不便となっているのかもしれません。「では、誰にとっても便利とはなんだろう?」を考えるきっかけともなりました。 誰一人取り残さない社会のためには、「多様な人の声を聞くこと」が重要なのだと、改めて痛感しました。
日本財団ジャーナル編集部