視覚障害者の生活を支える盲導犬。ボランティア不足解消が喫緊の課題
――盲導犬は補助犬の一種なんですね。盲導犬になれる犬種は限定されているのでしょうか? 奥澤:盲導犬になれる犬種に決まりはありません。ただ、盲導犬が止まったときや、障害物を避けて知らせるとき、小型犬だと人間の力が勝ってしまうため、犬の動作が人に伝わらないことがあります。その点では大型犬が盲導犬になりやすいですね。 また、人とコミュニケーションを取ることから、もともと猟犬であった犬種が多いようです。盲導犬の大半ががラブラドール・レトリーバーで、他にもゴールデン・レトリーバーやシェパード、コリーなどが活躍しています。
盲導犬の育成に欠かせない、ボランティアの存在
――盲導犬として活動するためには、さまざまな訓練が必要だと思うのですが、どのような育成をしているのでしょうか? 奥澤:盲導犬の候補犬は、盲導犬協会が所有している繁殖犬や、他の協会、海外の繁殖犬との交配によって生まれます。生後2カ月から1歳頃まではパピーウォーカーというボランティアに預け、人と一緒に安心して暮らすための関係づくりと家庭でのルールを学んでいきます。 パピーウォーカーとの触れ合いを通して、犬たちは人と一緒にいることが大好きになっていく、とても大切な期間ですその後、候補犬はパピーウォーカーから離れ、盲導犬としての訓練が始まります。 ――盲導犬になるための訓練期間はどれくらいですか? 奥澤:平均で約1年かかり、盲導犬としてデビューするのは2歳頃からですが、訓練期間は犬によってさまざまですね。例えば、覚えが早い犬もいれば、少しずつ覚えていく犬もいるように、性格はそれぞれです。 訓練士はそれぞれの犬に合わせた訓練計画を立てて育成しています。しかし、候補犬の全頭が盲導犬になるわけではありません。 訓練中に性格面や健康面において盲導犬には向かないと判断した犬は、キャリアチェンジ犬と呼び、一般家庭に譲渡しています。盲導犬になる犬は約3~4割です。 ――盲導犬になる頭数が意外と少ないことに驚きました。育成に携わるボランティアの数は、どれくらいいるのでしょうか? 奥澤:2024年4月の時点で約3,000人、ボランティアに参加していただいています。 活動内容は、盲導犬の親犬を飼育する「繁殖犬飼育ボランティア」、盲導犬候補の子犬を飼育する「パピーウォーカー」、盲導犬にならなかった犬を飼育する「キャリアチェンジ犬飼育ボランティア」、引退した盲導犬を飼育する「引退犬飼育ボランティア」とさまざまです。 しかし、盲導犬同様に、ボランティアの人数も決して多くはなく、盲導犬の育成を安定的に継続させるには難しいのが現状です。 ――盲導犬の飼育ボランティアをやってみたいけれど、犬を飼うことが初めてで不安がある人は多いと思います。そういう方でもボランティアは可能なのでしょうか? 奥澤:単身世帯ではない、留守がちでないなどの一定の条件を満たしていれば、どなたでも可能です。家族で何かのボランティアをしたいと思い、盲導犬のパピーウォーカーになる選択をした方もたくさんいらっしゃいますよ。 パピーウォーカーの期間は1年と短期であるため、ぜひ多くの方にボランティアに参加していただきたいですね。