性格は何歳になっても変えられる?研究でわかった「生まれ」と「育ち」の意外な真実【脳科学者が解説】
性格の正体は「痛み」と「快感」の記憶である
それでは、どのようにして後天的な性格がつくられていくのでしょうか。それを紐解くために必要なのが、脳の2大性質です。ズバリ「快感学習」と「恐怖学習」と呼ばれるものです。「快感学習」とは、体験した出来事を「快感」として記憶する脳の学習です。たとえば、あなたが訪れた新しいレストランで、珍しい魚が出されたとします。 その魚がとてもおいしかったら、それは「快感」として脳に記憶されます。これがいわゆる「快感学習」です。ところが、逆にその魚を食べて、お腹をこわしたとします。すると今度は、「もうこんな魚なんて絶対に食べない」と、脳は「恐怖(痛み)」として認識してしまうのです。これが「恐怖学習」です。 私たちは、一度食べて痛い目にあったことを忘れてしまったら、命の危険にさらされてしまいます。一方で、美味しいものを忘れてしまったら、また一から美味しい食べ物を時間をかけて探さなくてはいけません。私たちの脳は人類が生まれた時代からずっと生存していくために、「ここには行かないほうがよい」「この部族と付き合うとメリットが大きい」などを常に学習して、行動を効率化させています。 実はこの「恐怖学習」と「快感学習」が、後天的な性格をつくっていることが研究でわかってきています。
外向型がポジティブ思考になりやすい理由
このことを理解するために、一つ想像してもらいたいことがあります。あなたは、勇気を持って新しいことにチャレンジしてみました。そして、いざやってみたら、思いがけず「大成功」しました。とても大きな喜びを感じます。 次も新しいことにチャレンジしてみたら、再びうまくいってお金まで入ってきました。自信がついたあなたは、さらに新しいことをやってみますが、やればやるほど成功して喜びを感じます。すると、あなたは「新しいことにチャレンジすること」をどのように感じるでしょうか? このとき多くの人が「新しいことにチャレンジすること」=「よいこと」だと脳の中で結びつくため、「チャレンジは楽しい!」と感じます。これが「快感学習」です。脳の中で「新しいことにチャレンジ」=「快感」という学習が起きるため、新しいことにチャレンジすることが好きな性格だと思えるようになるのです。 実際はもっと複雑なメカニズムになりますが、簡単に説明すると、嬉しい出来事や体験をしたとき、脳の中で報酬系と呼ばれる「腹側被蓋野や」と「側坐核」という場所が活性化します。人にほめられたり、お金をもらったり、何かいいことがあると発火する場所です。自分の行動がうまくいったら大きな「快感」を感じるため、記憶の中枢の海馬も活性化しやすく、最終的に「大脳新皮質」の「長期記憶」に快感の記憶が蓄積されやすくなります。 これが「快感学習」のしくみです。この「快感学習」の恩恵を最も大きく受けているのが、外向型の人たちと言われています。外向型は脳の報酬系が活性化しやすいため、小さな出来事でも快感を感じやすく、快感学習をしやすいことがわかってきています。たとえば「人前で話したら、ほめられる」と、「人前で話す=楽しい!」という快感が内向型よりも大きく感じられるため、もっと人前で話したくなる性格になります。 「また楽しいことがあるかも」と、もっと積極的な行動をしたくなっていきます。しかも、外向型は内向型ほど恐怖学習をしにくいと考えられています。なぜなら、深く考えないため、嫌なことが起きても扁桃体があまり活性化しないからです。 外向型=快感学習が多い+恐怖学習が少ない→前向きな性格になりやすい こういったしくみで、外向型の人は一般的に明るい性格がより強化されていきます。 西剛志 脳科学者