日本でジョブズは生まれない…「イノベーションを起こせなくなった日本人」とイノベーションを起こす人の決定的な違い
革新的な起業家として知られるスティーブ・ジョブズだが、彼のような世界にインパクトを与える起業家やイノベーションが日本で誕生しないのはなぜなのか。「一度決めたことを変えるのは恥」と感じる日本人のメンタリティーとの関係性とは?※本稿は、池田清彦(著)、南 伸坊(著)『老後は上機嫌』(ちくま新書、筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 日本でイノベーションが 生まれにくいのはなぜか? 池田清彦(以下、池田) 今の日本のやり方の悪いところは、ある基準があって、全部その基準に当てはめてやろうとするから、変なやつが排斥されていく。文部科学省の科学研究費もそうだよ。基準に当てはめようと、いろいろと書かされる。俺は科学研究費なんて要らねえから、書いたことないけど。 南伸坊(以下、南) そういうの、本当に残念な感じがしますよ。決定権を持ってる人が、そういう人ばかりなんですかねえ。 池田 そういう基準みたいなのがあると、大体選ばれるのは、終わった研究ばかりなんだよな。要するに、偉い人とか、文科省の役人が分かるような研究は、もう駄目なんだよ。駄目っていうか、お金かけるんだったら、誰もわけが分からないような研究にかけなきゃ。わけが分かんないような研究から、すごいのが出てくるんだから。 何か基準みたいなのを作って、基準から外れた研究は全部落ちとしちゃうから、イノベーションも全然起こらない。誰もわけ分かんないんだったら、広く均等に予算をばらまけばいい。そのほうが面白い研究が出てくるよ。
南 自分たちが全部コントロールできるっていう前提でやってるのが、違いますよねえ。 池田 日本は、なにか新しいものを生み出すには、偶有性が必要だってことが全然分かってないからね。だから、本当に変な研究が出てこなくなった。 アメリカは1970年代頃、日本と同じことをやってたら負けるって分かったんだよな。日本が1960年代から70年代に工業化して、効率も良くなって、性能のいい製品をたくさん作れるようになって、世界を制覇する勢いになった。アメリカが同じことやろうとしても、国民の気質とかが違うからできない。それで、今までにないものを作ることにシフトチェンジして、スティーブ・ジョブズみたいなのが出てきた。 南 ジョブズがつくったスマホのデザインいいですね。シンプルなのが好きだったみたいで、「そういうふうにしろ」ってむちゃぶりしたらしい。そういうところが面白いなって思う。 ● スティーブ・ジョブズが 大人数の会議を嫌がった理由 南 スマホの内部のメカニズムを開発する技術者からすると、見た目がきれいとか関係ない。だけど、ジョブズは「きれいにしろ」「ボッチが何も付いていないスマホを作れ」って言う。最初にこういうものにしたいっていうのがあって、それを実現するためのアイディアを出すことを求めた。それで技術者も、いろんなことをやるようになったんでしょうね。