日本でジョブズは生まれない…「イノベーションを起こせなくなった日本人」とイノベーションを起こす人の決定的な違い
池田 意見は、コミュニケーションしてるうちに変わるもんなんだよ。自分が言ってることで相手が変わって、相手の話を聞いて自分が変わる。同期してお互いに変わるのがコミュニケーションの本質なんだよ。だから、ずっと自分の意見が変わらないやつって、ただのアホ。変わんなきゃ、自分が言いたいことだけを言って、けんかしに来てるようなもんでしょ。だけど日本って、そういうことが珍しくない、特にひどいかもしれない。つまらないよな。 南 自分が間違っていると認めたくない気持ちも分かんないでもないけど、競争をしてるわけですよね、俺のほうが上だっていう。討論している人を見てて、こっちの人はこういうふうに言って、もう一方の人はこう言ってる。俺だったらどっちかなとかって考えてたら、いきなり片方が説得されて意気投合したら面白いじゃないですか、変わるっていうことがね。 だけど、それは本当に少ないですよね。さっきまでものすごく突っ張ってたのに、それは言えるかもしれないって急に態度変えたら、すごく面白い。
池田 偉い先生ほど、意見を変える柔軟性があるよね。大森荘蔵っていう哲学者の先生がいらして、「大森荘蔵先生を囲む会」という研究会をやってて、僕も中島義道(哲学者、作家)に誘われてこの会に参加していた。 大森先生が最新の自分の論文を弟子たちに配って、それをみんなで検討するんだけど、「大森先生、ここ違うんじゃないですか」とか「これは間違ってますよ」とか、弟子たちが言いたい放題なの。大森先生が一生懸命反論する姿を見て、これって「大森先生をいじめる会」じゃないのかって思ってた(笑)。 ● 「首尾一貫」が価値になると 途中で意見を変えられない 池田 だけど、大森先生は時々じっと考えた後、「あなたのおっしゃることのほうが正しいかもしれませんね」って言うんだよ。俺、本当に偉い先生だなと思った。弟子にやり込められて「あなたの意見のほうが正しいかもしれない」って言える先生はそんなにいないよ。だから、みんな大森さんのことを尊敬してたんだと思う。頭が柔らかくて、すごいなって思った。 南 すごいですね、そういう人なんですか。偉い先生ですね。首尾一貫って、それ自体が価値になっちゃってますよね。だから、途中で間違ってるかも、と思っても変えられない。