【メルセデスのモンスター】メルセデス・ベンツ 300SEL 6.3/W109(1968-1972年)
パワフルな高級感!
W109シリーズの最高級モデルであるメルセデス・ベンツの300SEL 6.3。当時の標準仕様価格で45.400マルクであった。(参考;1960年半ば頃の600/W100リムジンは¥12.500.000、600プルマン/W100は¥14.000.000であった)スポーツカーの性能を備えたこのモデルは、豪華で快適な高性能セダンの元祖であり、現在に至る成功した伝統モデルとみなされているのも当然である。
1972年までに合計6.526台が生産された。当時としては比較的多い台数であり、メルセデス・ベンツのパワフルセダンセグメントへの参入であった。メルセデス・ベンツクラシックのオールタイムスターズ取引部門の責任者であるパトリック・ゴットヴィック氏は次の様に語っている。「この魅力的なモデルは、長い間コレクター市場の定番となっています。今日、それは非常に望ましいものであり、入手可能な車両の価格は大幅に上昇しています。評価状態2の良好な車両の価格は80.000ユーロ(約1352万円)以上です。」 この価格が高いか安いかは、コレクターズの観る目や実際、運転するドライバーにかかっている。何故なら、このモデルは強力なV-8気筒エンジンと非常に優れたパフォーマンスを備えた自動車の歴史のマイルストーンだからだ! しかも、当時のAMG社はこの300SEL 6.3をチューンした「300SEL 6.8」で1971年のベルギー、スパ・フランコルシャンでクラス優勝を果たし、総合でも2位に輝いた。このレースでメルセデス・ベンツの名がモータースポーツのトップに再び登場した1971年として語り継がれている!
そして、1972年発表の初代Sクラス/W116に6.9リッターにまでスケールアップしたエンジンを搭載した450SEL 6.9を1975年5月に発表した(この6.9のサスペンションはハイドロリックとされた)。
この6.9リッター登場により、業界筋では「690リムジン」登場かと胸を膨らませたが、世界的経済状態と石油危機を鑑みて、結局はこの計画は中止された。ちなみに450SEL 6.9は1980年までに7.360台生産された(日本では正規輸入されず、並行輸入された)。 PHOTO:メルセデス・ベンツAG、妻谷コレクション。
【筆者の紹介】 妻谷裕二(Hiroji Tsumatani) 1949年生まれ。幼少の頃から車に興味を持ち、1972年ヤナセに入社以来、40年間に亘り販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特に輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版カタログや販売教育資料等を制作。また、メルセデス・ベンツよもやま話全88話の執筆と安全性の独自講演会も実施。趣味はクラシックカーとプラモデル。現在は大阪日独協会会員。
妻谷裕二