【メルセデスのモンスター】メルセデス・ベンツ 300SEL 6.3/W109(1968-1972年)
しかも、その性能と操縦のし易さだけでなく、トップレンジモデル(Sクラス)ならではの優れた快適性、ゆったりとした広さ、長距離でも疲れない様に設計されているということがよく解る。1968年、W109シリーズのフラッグシップモデルとなった「300SEL 6.3」は、当時の新たな基準を打ち立てたのも当然である。メルセデス・ベンツのすべての高性能セダンの祖とされる所以だ。 当時のプレスインフォメーションでも、その特徴を次の様にまとめている。「このモデルは、最高の快適性と並外れたパフォーマンスの組み合わせにおいて、おそらく他に類を見ないものです。平均以上のパワーとパフォーマンスを期待するお客様の要望に応えます。」と謳っている。 この「300SEL 6.3」は通常の「300SEL」と1963年の大型高級リムジン「600/W100」の間のギャップを埋めた。つまり、「300SEL 6.3」のV型8気筒エンジンはメルセデス・ベンツの威厳「600/W100リムジン」から移植されたのだ。当時のダイムラー・ベンツ社は、特にこの「300SEL 6.3」を国際的なラインナップの中で最高の位置を占めると主張したのも当然である。
どんな要望も叶えるレベルの乗り心地!
この「300SEL 6.3」の技術データは、スポーツカーのパフォーマンス特性を裏付けている。最高速度は220km/h、 0-100km/h加速は6.5秒、発進から1kmまで27.1秒!「この300SEL 6.3は世界市場で最も速く、最もパワフルな量産車の1つとなります。特に静かで全く振動のない走行、エアサスペンションとオートマチックトランスミッションは、どんな要望も叶えるレベルの乗り心地を生み出します。」とプレスインフォメーションは続く・・・。
外観上では、この300SEL 6.3はW108/109シリーズの他のモデルとほとんど相違がない。しかし、最新の照明技術を備えたツインハロゲンヘッドランプ、フロントフォグランプ、トランクリッドの右側に配置した「6.3」の文字がフラッグシップモデルである事を特徴づけており、それ以外は非常に控えめである。当時のドイツ自動車雑誌「アウト・モトール・ウント・シュポルト」は、1968年の第6号でメルセデス・ベンツ300SEL 6.3について次のように報じている。「このメルセデス・ベンツ300SEL 6.3の後に取り残されたアウトバーンの王者である何人かのポルシェ 911および 911 Sドライバーを驚かせたことは間違いありません。もし彼らの誰かが今、この文章を読んでいるとしたら、車の性能不足について工場に文句を言う必要はない。」と・・・・。