【メルセデスのモンスター】メルセデス・ベンツ 300SEL 6.3/W109(1968-1972年)
インテリアは大型化したスピードメーター、回転数カウンターや時計の配置換えにより、「6.3」と通常の300SELとが区別される。エアサスペンションとオートマチックレベルコントロールは、高性能モデルの優れた装備で負荷の変化に自動的に適応する。つまり、車両の姿勢が一定に保たれるため、乗り心地が大幅に向上。 ブレーキは、4輪ベンチレーテッドディスクブレーキにより、最適に減速して確実に止まる設計。その他の標準装備にはパワーステアリング、スムーズで迅速にシフトする4速オートマチックトランスミッション、ロッキングディファレンシャル、パワーウィンドウ、ニューマチックセントラルロック、そしてメルセデス・ベンツ初の「70シリーズ」のワイド・低扁平ラジアルタイヤを採用した。
排気量6.333ccでパワフルなV-8気筒エンジンは、メルセデス・ベンツの威厳600/W100リムジンからごくわずかな変更を加えて採用。アクセルペダルの位置、エンジン速度、空気圧、冷却水の温度を考慮したオートマチックコールドスタートとウォームアップ機能を備えた8プランジャー噴射ポンプを備えている。燃料は8個のノズルによって高圧でインテークマニホールドに噴射される。この配置は長年に亘ってメルセデス・ベンツSEモデルで成功しており、効率的な燃焼を保証。このエンジンを搭載する為に、フロントフレームセクション、トランスミッショントンネル、フロアアッセンブリが変更された。
設計はErich Waxenberger(エーリッヒ・ヴァクセンベルガー)によるアイデア
300SEL 6.3はメルセデス ベンツのテストエンジニア、エーリッヒ・ヴァクセンベルガーのアイデアで誕生した。 1960年代に、彼はW109シリーズのモデル用に600/W100リムジンのV-8気筒エンジンの可能性に気付いていた。当初、乗用車開発責任者のルドルフ・ウーレンハウトの支援を得ずに、彼独自でテスト車を製作。しかし、ルドルフ・ウーレンハウトを黙認させる事は不可能であった。オフィスに座っていたルドルフ・ウーレンハウトは、プロトタイプのエンジンが通過する時の静かなうなり声を聞き、すぐにヴァクセンベルガーを呼び出して報告を求めると、開発作業に賛同した。ルドルフ・ウーレンハウトを知る人ならば、彼が正式な開発命令に署名する際、控えめに微笑んでいる様子を想像できると思う。