二十歳のとき、何をしていたか?/ダースレイダー 人生がまるごとRPG。 東大に合格したその夜に知った、 マイクを持ってラップする喜び
その年は『さんぴんCAMP』というヒップホップのビッグイベントがあり、ライムスターにブッダブランド、キングギドラなどが登場。日本語ラップが大きく飛躍し、シーンを賑わせていた。はやる気持ちを抑えて攻略を続け、見事東大に合格。本郷にある赤門前で発表を見たその日、先輩に報告すると「今日の夜に高円寺のドルフィンでライブがあるから、お前も来て歌ったら?」。ついにきた。念願のクラブデビューだ!
「ダンジョンに突入する感じで『やります!』って返事しました。キングギドラの『地獄絵図』っていうイカつい曲のインストにリリックを乗せた『16番地の殺戮現場』という曲だけ持って高円寺へ。目の前にはお客さんで満員の、夢にまで見た現場が広がってる。一番手で、マイクを持ってステージに上がってラップをしたら、もうめちゃめちゃ気持ちよかったんですよ。自分で書いて練習してきたラップを、ちゃんとした音響で人前でやることが最高に楽しくて、自分の中からものすごいエネルギーが湧き上がる感じがあって。合格発表より今がいちばん楽しい! って思っちゃったんです」
大学入学とともにラップゲームを本格的にスタート。予備校時代に本名の「レイ」を生かして名付けた「ダースレイダー」という名前で活動を始め、クラブへ行き、友達ができたら家に呼び、ヒップホップを聴いた。装備も丸刈りにヒゲに迷彩服に変更。入学までのわずか1か月でみるみるレベルアップし、結果的に新入生のオリエンテーションをサボることとなり、入学式で一人ぼっちに。でも、クラブという新しいステージがダースレイダーさんを待っていた
「実はいろんなことが繋がってるんですよね。僕の最初のラップを見てた大森庸平は、今も僕のアルバムやイベントのデザインを手伝ってくれているし、彼の幼馴染みの真田人とはMICADELICを結成しました。その瞬間は意味がわからなくても、10年後、20年後に『あのときのアレってこういう意味があったんだ』が見えてくる。でも、アクションを起こさないと何にも繋がらないんです。20代、バカやったことも、誰かを怒らせたこともたくさんあります。でもすべて無駄ではなかったと思うんです」