高卒→欧州の20歳日本人DFが「すごい成長」 ドイツ代表も絶賛「見て分かるでしょ」【現地発コラム】
チームの心臓も認めるチェイスの姿勢「いつもハードに取り組んでいるし、熱心で真面目」
長谷部誠の言葉を思い出す。鎌田大地がレンタル先のシント=トロイデンからフランクフルトに復帰したシーズンに、レギュラーの座を獲得して活躍したことに対して、「1シーズンだけではなく、数シーズンにわたってコンスタントにプレーして初めて一流」と話していたことに本質が詰まっている。そういえばバイエルン会長のウリ・ヘーネスは10代のトニー・クロースがアシストを決めた試合でコメントを求められると、「クロース? 悪くはなかったが、今日のベストは彼じゃない。不必要に若手を持ち上げてどうする」とメディアにぴしゃりと言い放ったこともあった。 CLでシュツットガルトが5-1と快勝したヤングボーイズ(スイス)戦では、チェイスの出場機会はなかった。大量リードしたことで、普段出場機会が少ない選手が優先して起用され、チェイスは週末のハイデンハイム戦に向けて休養をもらったという見方が濃厚、というのがしっくりくるほど、今のチェイスは戦力としてシュツットガルトで存在感を高めている。 取材エリアで待っていると、最後のほうにゆっくりと登場。声をかけると、「あ、すいません。今日はもう行かなくちゃいけなくて」と済まなそうに言ってから、外へ出ていった。一緒にいたのはヨシュア・バグノマン。ドイツ代表にも招集されたことがある実力派右サイドバックだ。車で送ってもらうようだ。頼れる先輩との話が弾むのか、ずっと話しながら歩いていく。1ゴール1アシストの活躍を見せたバグノマンはこの日が誕生日。待ってもらうわけにもいかないのも理解できる。 高いレベルでチェイスは奮闘している。この試合でスイス王者ヤングボーイズの選手たちがシュツットガルトのプレスやパススピードに付いていけないシーンが少なくなかった。出しどころが見つけられず、必死にキープをしようとしてはボールを奪われる。絶望的に周りの選手に「どうしたらいいんだ?」という表情を浮かべているのが印象的だった。チェイスはそんな環境で日々トレーニングをし、目まぐるしく状況が変わるなかハイスピードで最適な判断をしなければならないプレーを試合の中でずっと求められているのだ。 「いつもハードに取り組んでいるし、熱心で真面目。ここ数か月ですごい成長しているし、それは見て分かるでしょ」 チームの心臓であるドイツ代表MFアンジェロ・スティラーの称賛がすべてを物語っているではないか。チェイスの成長はまだまだ続いていく。 [著者プロフィール] 中野吉之伴(なかの・きちのすけ)/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。
中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano