磯村勇斗×黒木 華の共通点「友達の輪は広げない。人類皆友達ではありません!」
虚と実がシンクロしていくその描き方が面白かった
── 今回の映画は、江戸時代の戯作者・滝沢馬琴の実人生と、馬琴が書いた虚(フィクション)の物語が交錯しながら展開します。「南総里見八犬伝」は以前からご存知でしたか? 磯村 僕は作品としての小説をちゃんと読んできたわけではないのですが、確か中学の歴史の教科書にも出てきたし、なんとなくの大枠は知っていました。まさにファンタジー小説の先駆けでもあり、非常に男の子が好きな内容だなと思って見ていましたね。 黒木 私は確か小学生の頃に、課題図書か何かで学校にあった本で読んだ気がします。物語を読むのは当時から好きで、磯村さんもおっしゃったように「八犬伝」はその先駆け。 しかも、八犬士が集まり悪を倒すというストレートにカッコいいお話だったので、ワクワクしながら読んだと思うし、だからこそこうして、200年近く経った今でも映画になるようなお話なのだと思います。
── 虚実のパートが入り混じった作りとなっている今回の構成についてはどう思われましたか? また、お二人が登場する「実」のパートの撮影はどのように進められたのでしょうか。 黒木 撮影は別々に撮っていて、我々のほうは割と地味な空気感の中で進みましたが、「虚」のパートの撮影現場を少し見に行かせていただいたら、こちらとはまったくトーンが違っていて。さらにVFXが駆使された初号試写を見た時には、「こんなことになってたの!?」という驚きがありました。 磯村 僕も「虚」の部分に関しては台本上の文字でしか知らなかったので、実際に映像を見て、「こんなに派手に出来上がってたんだ!」とびっくりしましたし、虚と実がシンクロしていくその描き方もやはり面白かったです。 黒木 今回、虚実が混在する意味は絶対にあって、両方が同時進行することで私は、馬琴が見せたかったものや、そこに込められた思い、書いていたものの繋がりにある背景などをつぶさに見ることができたし、だからこそ「八犬伝」を残さねばならないという馬琴や宗伯、お路の強い気持ちを感じながら演じていたので、そういう意味でもこの脚本は面白いなと思いました。 磯村 「虚」のファンタジーの部分だけでなく、「実」が混じって物語をけん引するところは、今回の映画の本当に新しいところなので、僕は宗伯として、実の世界で生きてきた証やそのリアリティをいかにしっかり残すかを強く意識しながら、現場では、父である役所さんの背中や空気感を見て過ごしていました。 ── 馬琴の息子として、役所さんとの共演シーンも多いですが、間近で役所さんや、馬琴の親友・葛飾北斎役の内野聖陽さんとお芝居をされていかがでしたか? 磯村 いやもう、すっごく緊張しました。特に父の馬琴は役柄的にも宗伯にとって怖い存在ですし、さらに馬琴の眉毛がとても凛々しくて、より役所さんがものすごい迫力に見えたんです(笑)。 内野さんとは、違う作品でもご一緒していますけれど、(ともに同性愛者を演じた時とは)まったく違う北斎としての佇まいでしたので、あのすごい先輩お二人に囲まれて若造を演じるのは非常に緊張しましたし、刺激がありました。 でも、お二人はとても気さくで、時代劇の所作を教えてくださるなど温かく迎え入れてくださって、本当に贅沢な時間を過ごすことができました。