「近親間の不動産の貸し借り」「暗闇で違法駐車に衝突」…「人生の地雷」を踏まない方法を、1万件超の事案を扱った元・裁判官が伝授する
自動運転車の過失割合はどうなる?
―― 瀬木先生が車を運転される際に、あるいは歩行者として行動している際に注意されていることなどあれば、教えてください。 瀬木私が注意していることというより、一般論で話しましょう。 重要なことは本の1項目としてまとめておきましたが、まず、酒酔い、あおり、携帯電話使用等の危険行為を避けるべきことはもちろんです。 普通の運転者でも注意すべきなのは、まずスピードの出し過ぎです。大事故の大半は、いずれかの車が50キロ以上出している時に起こります。特に、雨天では、停止するまでに走ってしまう距離が非常に大きくなり、大事故につながります。 場所としては、交差点とカーブでの事故が多いですね。 また、横断歩道では歩行者絶対優先なのにそうしていない車が多いですが、事故になると、刑事、民事ともに、重い責任を問われます。 なお、私は、歩行者、特に老人や子どもを見たら必ずスピードを落としています。また、歩行者としては、道路横断には最大限注意しています。さっきのマニュアルは、歩行者にやさしくなく、過失相殺率が大きいですからね。 ―― 本書の中には記述がありませんでしたが、今後、自動運転の技術が普及するようになると、いろいろと法的な問題が出てきそうですね。自動運転車の過失をどこまで認めるのかなど、いろいろと厄介そうです。 瀬木正直にいって、完全自動運転の実現自体まだ確実ではないという気がしますが、保険、損害賠償、刑事責任等々含め、根本的な枠組みの変更が必要になるでしょうね。 ただ、運転アシストのレベルであれば、基本は現在とさほど変わらないのではないでしょうか。基本的には運転者の責任、場合により装置の不備等があった場合にはメーカー等に求償請求、というところかな。 いずれにせよ、部分的にでも自動運転にシフトする場合には、多数の法律問題に対処するための立法や法改正が必要でしょうね。 本書の取り扱うテーマは、交通事故、不動産関係、離婚・相続関係全般、痴漢冤罪を始めとする刑事事件関係、また、労働・投資・保証、医療・日常事故、いじめ、海外旅行、高齢者詐欺と、まさに人の一生をカヴァーする広さで、多岐にわたります。 次回は、痴漢冤罪をはじめとする刑事事件についてお話を伺います。 元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」「なぜ、日本の政治と制度は、こんなにもひどいままなのか?」「なぜ、日本は、長期の停滞と混迷から抜け出せないのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
瀬木 比呂志(明治大学教授・元裁判官)