JALが断念したコンコルドが“復活”?米国の最新「超音速旅客機」に死角はないか
墜落事故を起こしたコンコルド以来となる「超音速旅客機」を、米国Boom Technologiesが開発中だ。現行ジェット機の2.6倍の速度、マッハ2.2での運航開始を目指すこの航空機は、どんな代物なのか。同社には日本航空(JAL)が出資しており、優先発注権を保有している。日本発着の路線展開を大胆予想する。(ライター 前林広樹) 【写真多数】1周回って知らない!コンコルドって何?経済学用語にまでなったコンコルドの教訓。懐かしい…!コンコルドの様子 ● 「21世紀のコンコルド」が誕生か 2003年にコンコルドが運航を終了して以来、旅客便としては実現していない超音速飛行。各国を空の便でつなぐ飛行機の所要時間は、空港や空域の混雑などにより延びるばかりで、時間短縮がなかなか難しい状況となっている。 そうした中、飛行速度を再び音速を超えるレベルにまで上げた航空機を開発しているのが、米国コロラド州の航空ベンチャー・Boom Technologies(ブームテクノロジーズ)だ。開発段階にある超音速旅客機「Overture」(オーバーチュア)が、10月に5回の飛行試験(後述の試験機にて)を成功させ、飛行能力に問題がないことを確認したという。 同社は、24年内には超音速での飛行試験も実施し、29年までの飛行免許取得ならびに旅客便就航を目指している。そんな「21世紀のコンコルド」とでも呼ぶべき新たな超音速旅客機の特徴と、日本路線の導入是非について解説しよう。 次ページ以降の目次はこちら ・JALも出資するBoom Technologiesとは? ・1周回って知らない!コンコルドって何? ・経済学用語にまでなったコンコルドの教訓 ・日本~バンコクやシンガポールに期待できるワケ ・旅客便として不可欠な課題も山積
● JALも出資するBoom Technologiesとは? Boom Technologiesは、14年にアマゾン・ドットコムやグルーポンで幹部を務めたブレイク・ショール氏によって設立された。同氏はパイロット資格も所有する航空好きで、飛行機による所要時間が1950年代と大して変わっていないことを問題視。超音速旅客機の開発・製造を行う企業をコロラド州デンバーにて立ち上げた。 その後、2024年6月にはノースカロライナ州に製造工場が完成し、機体の本格生産に着手。現在は20年に完成した試験開発機「XB-1」を用いて超音速飛行を含めた飛行試験の真っ只中にある。 超音速旅客機Overtureは、試験機からさらに改良を重ねて、最終的には現行のジェット旅客機の2.6倍の速度であるマッハ2.2(音速の2.2倍)での運航開始を目指している。 実現すれば飛行時間の短縮効果は大きい。一例として、下記の移動がざっと半分の所要時間で済むようになる。 ●ロンドン~マイアミ:約10時間→約5時間 ●ロサンゼルス~ホノルル:約6時間→約3時間 ●サンフランシスコ~東京:約11時間→約5時間半 コンコルド以来、約半世紀ぶりとなる超音速飛行機に期待する企業は多い。17年には英ヴァージン・アトランティック航空とJALも出資。2社とも、機体完成後の優先購入権を所有している。JALは、「航空会社の観点から、機体の仕様策定やプロモーションにも協力する」予定だという。 なお、アメリカン航空とユナイテッド航空はすでに導入を決めている。今後も導入を検討・決定していくエアラインは増えていくことだろう。 また、米国空軍はBoom Technologiesに技術協力を申し込んでいる。現在、超音速飛行ができるのは大西洋や太平洋などの洋上に限られる。しかし、規制緩和で陸地の上空でも可能となれば、現在約5時間かかっている米国大陸横断は約2時間半となる。軍の人員輸送の面で十分な効果を発揮できると期待されているのだろう。