JALが断念したコンコルドが“復活”?米国の最新「超音速旅客機」に死角はないか
● 日本~バンコクやシンガポールに期待できるワケ 東京から米国西海岸までの運航も可能なOverture。日本における路線展開の可能性はあるだろうか? 前述した通り、JALがBoom Technologiesに出資して優先購入権利を得ていることから、Overtureを導入し北米西海岸や東南アジア、インドなど就航範囲内の国際線に導入する可能性はあるだろう。 とりわけ筆者が期待しているのが、日本~東南アジア路線だ。コンコルドが登場した時代と比べ、日本から東南アジア各都市への需要はビジネス・観光とも飛躍的に増加している。仮に東京からバンコクあるいはシンガポールが、現在の半分となる2~3時間で結ばれた場合、ビジネスクラス相当の料金を払ってでも利用したいと思う乗客は相当数いるだろう。 しかも日本と東南アジア諸国の場合、時差が1~2時間程度であるため、飛行機の時間短縮がそのまま旅行・出張時間の節約につながりやすい。この時差を考えると、短縮効果が相殺されてしまう太平洋路線や大西洋路線よりも、東南アジアの方が超音速旅客機の効果を発揮しやすいと言えるだろう。 加えて、すでに導入を決めているユナイテッド航空やアメリカン航空は、かつてのコンコルドが飛んでいた大西洋路線がメインと思われるが、米国西海岸から日本への直行便の可能性もありそうだ。ユナイテッド航空については、日本からの以遠権を活用した東南アジア路線もあり得るだろう。
● 旅客便として不可欠な課題も山積 最後に、筆者の考えるOvertureの課題(運航面)をいくつか述べたい。まず、超音速旅客機というと、環境への悪影響や墜落事故などにより悪いイメージが定着していることが、最大の課題と言えるだろう。 そして、ソニックブームや騒音などについては、前述通りコンコルドよりは大幅に改善されてはいるものの、航空当局や空港周辺住民に十分に理解してもらえるかもポイントだ。 また、料金については、どんなに安くてもビジネスクラス相当の料金になると思われる。航空会社によってはファーストクラス相当か、かつてのコンコルド同様さらに上の運賃設定になるかもしれない。 その場合、短くなる飛行時間の中で、いかに富裕層やマイレージの上級会員に納得してもらえるような上質なサービスを提供するか、エアライン側も大きく問われることになる。現に、米国ではニューヨークからワシントンD.C.など飛行時間が短い路線にもかかわらず、ラウンジや機内食を過剰に充実させて結果的に失敗した事例もある。 もし、日本~東南アジアで導入される場合は、飛行時間が中長距離便相当から東京~石垣と同じくらいの短距離便相当になる。運賃と提供サービスのバランス、航空会社の戦略が問われることとなりそうだ。 そして、日本での運航を考えると、一般消費者から不安視する声もあるかもしれない。ただ、コンコルドは羽田空港や関西空港、長崎空港での乗り入れ実績がある。成田空港のA滑走路も4000mありコンコルドに対応する前提で作られているため、超音速旅客機は離着陸可能だ。それゆえ、航空当局がどのように判断するかが問われるだろう。 JALがコンコルドの導入を断念してから半世紀以上が経過した。ついに超音速旅客機が日本にやってくるのか。今後の動きに大注目である。