なんと、ウォーキングしても「報われていなかった」…「健康づくりの域を出ない運動」が「山登りで役立つトレーニング」に変わる、驚愕の方法
トレーニングは組み合わせることで効果が増大する
「下界で行う有酸素運動の長短所と、登山に役立たせるための工夫」は、は、これらのトレーニングの長短所を示したものです。どれにも一長一短があって、万能な種目はないことがわかると思います。「改善点・注意点」として、登山に対して役立つようにするための改善案を示しました。 下界で行う有酸素運動の長短所と、登山に役立たせるための工夫 ウォーキング 長所:日常生活の中に組み込みやすい。安全性が高いので、これまで運動をしてこなかった人が、最初に始める運動としては最適である 短所:平地を歩く限り、早歩きをしても、心肺や脚筋にかけられる負荷には限度があるので、登山に対して十分通用する体力養成にはならない 改善点・注意点:坂道や階段を取り入れてウォーキングをする。ウォーキングとジョギングを交互に行う 階段昇降 長所:登山と運動様式が似ているので、上手に行えば効果は高い。下り用の脚筋力(伸張性の筋力)の強化ができる 短所:駅などの階段(標高差5~6m)を単発で上り下りするだけでは、心肺能力も脚筋力も強化できない 改善点・注意点:最低でも15分くらいは往復する。もしくは獲得標高が150m以上になるよう計算して行う(駅などの公共施設の階段は1段が16cmなので、自分で計算できる)。運動負荷が大きいので、少しずつ増やすようにする。路面が固いので、膝や腰を痛めないように注意して行う サイクリング 長所:体重はサドルが支えるので、膝や腰への負担が小さい。長時間飽きずにできる 短所:平坦地や市街地でゆっくり走るだけでは、心肺能力、脚筋力のどちらの強化に対しても十分な刺激とはならない 改善点・注意点:平地ならば一定以上のスピードで走る。もしくは坂道を取り入れる。ただしその場合でも、下り用(伸張性)の脚筋力は強化できないので、別途、スクワットなどの筋力トレーニングを行う 水泳・水中歩行 長所:膝や腰への負担が小さいので、これらの部位に負担をかけたくない人に向く。肥満者やぜんそくの人にもよい。耐寒能力が身につく 短所:心肺能力の強化にはよいが、脚筋力の強化にはつながらない。水泳ばかりやっていると、むしろ脚力は弱くなってしまう 改善点・注意点:別途、スクワットや階段昇降など、脚筋力を鍛えるトレーニングも行う ジョギング・ランニング 長所:負荷が高い運動なので、短時間でも大きな効果がある。特に、心肺能力の改善によい。筋力もある程度までは強化できる 短所:運動不足の人や中高年が急に行うと、心臓に過度な負担をかけたり、膝や腰などを痛めやすい。重い荷物を背負うための脚力強化はできない 改善点・注意点:上記のトレーニングが物足りなくなってから、少しずつ始める。また別途、脚筋力のトレーニングを行うことが望ましい しかし、このような改善をしたとしても、限度もあります。 そこで、これらの種目を行う場合には、複数の種目を交互に行うとよいでしょう。それぞれの短所が解消できるだけでなく、各種目の長所が生かされるからです。 栄養の摂取と同じで、いくら身体によい食品でも、同じものを食べていては栄養が偏ってしまいます。さまざまな栄養素を組み合わせて補給することが大切なのです。 * * * 次回は、登山のためのトレーニングの目的、そしてトレーニングにおいて大切にするべきこと、についての解説をお届けします。 登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術 安全に楽しく登山をするために、運動生理学の見地から、疲れにくい歩き方、栄養補給の方法、日常でのトレーニング方法、デジタル機器やIT機器の効果的な使い方などをわかりやすく解説。豊富なコラムで、楽しみながら知識が身につけられます!
山本 正嘉(鹿屋体育大学名誉教授)