仕事・家庭・介護 山積み問題を乗り越える仏教の教え
中年世代 山積みな問題は「知性」で乗り越えるべし
都市部に住んでいると、大半の道はきれいに舗装されています。私が子供の頃は、寺へ続く参道も舗装されておらず、雨が降ると足元はどろどろ。雑草が生い茂る道を歩くほうが自然でした。しかし今では、当然のように舗装された道ばかりです。私たちが生きていく上で、邪魔になる物があってはいけないような風潮もあります。 しかし仏教では、物事を正しく見たならば「八苦」が当然なのです。認めがたいことですが、世の中は思い通りにならないほうが多いのです。私たちの人生は、「何も起こらない」のが当然なのではなく、「様々な想定外のことが起きる」のが当たり前なのだと、私たちはそろそろ気づくべきだと思います。 人生を振り返ってみると、自分の思い通りにならないことなんてたくさんあったはずです。けれども、一つ希望が持てることがあります。それは、すべて思い通りに進む人生ではなかったけれど、今こうしてこの記事を読んでいるということは、なんとかそれでも生き抜いてきた。想定外のことが起きても、なんとか越えてきたわけです。乗り越えるだけの柔軟性があるのです。 若く体力がある時は力任せでもよかったけれど、これからの人生は知性を磨いて乗り越えてほしいと思います。その時、参考になるのが仏陀の知恵です。ではお釈迦さまは、想定外の出来事が起きた時、この世知辛いストレスフルな世の中で自分がつぶれないためにどうしたらいいと説かれたのでしょうか。
想定外の出来事に対処するには「日ごろ」の積み重ねしかない
想定外のことが起きたその時に「何かしよう」と思っても、急にはうまく立ち回れません。それには常日ごろから、「想定外の出来事が起きるのが人生なのだ」と、自分の生き方を見直していく練習が必要なのです。つまり、想定外の出来事が起きた時に対応する柔軟性や、乗り越える力を養うためには日ごろの積み重ねが重要だということ。 では普段、何を心がけたらいいのか。ポイントは4つあります。まず1つ目として、お釈迦さまは「雑事を少なくせよ」とおっしゃいました。私たちは案外、自分がやらなくてもいいような雑多なことにも時間を費やしているもの。それでいて、いざとなると「時間がない」と言いがちです。歳を重ねていくと、様々なことができるようになりますから、雑事も増えてしまいます。 2つ目は、仕事でも勉強でも、「自分が成すべきことを、成すべき時にやっておく」ということ。これをせぬまま逃げ続けていては、知識も、体力も、技術も身に付かずに、想定外のことが起きても乗り越えられません。自分の知識やスキルを付けるためにも、怠ることなく続けていくのは大事です。これら2つを実行することで時間の余裕ができ、生活の中に余白が生まれます。 3つ目は、煩悩の一つである「慢(まん)」といって、人と比較することを指します。私たちは自分の人生を生きているのにもかかわらず、他の人と自分を比較したり、他人を気にしたりしている時間が多いものです。これは自分のエネルギーを大きくそいでしまう要因です。気を付けていないと、他人に対して変に意地を張ってしまったり、見えを張ったり、誰かに勝とうとしたり、あるいは人と比較して落ち込んだりしてしまいます。 4つ目は「怒り」です。怒りも自分のエネルギーを奪う要因の一つですから、怒りがまだ小さいうちに、早く処理をする工夫をすること。怒りの手放し方は、「イラつく場面、どうするか 『徳なき人を哀れむべし』で鎮める」を参考にしてみてください。 怒りが大きくなると理性が働かなくなり、物事の処理能力は落ちてしまいます。何か問題が起きた時、落ち着いて冷静に判断できる自分でいるためには、日ごろから怒りを増やさないようにしておきましょう。「慢」と「怒」を整えておくと、精神面で気持ちに余力が生まれるようになります。