他にもいる?オスとメスで生殖器が逆の虫 イグノーベル賞の吉澤氏に聞く
交尾器が進化するほどの要因は一体何だったのか?
――最後に、先生の研究の今後の進展についてお聞かせください。 吉澤:トリカヘチャタテムシの雌がどれくらいの頻度で交尾を繰り返すのか、雄が雌にどのように、どのタイミングで精包を渡しているのかなど、まだ生態のすべてが解明されているわけではありません。そのためにトリカヘチャタテムシの生きた個体を採集しなければなりませんし、知りたいことはたくさんありますが、進展させるにはやはり時間が必要です。最近、ブラジルに新しい研究室が立ち上がり、その中に暗室のような昆虫の飼育部屋もあるということなので、とても期待しています。もしブラジルの研究が軌道に乗れば、とても心強いです。 そして何より、トリカヘチャタテムシが交尾器の進化を遂げるほどの要因は一体何だったのか、今はこのことに興味をひかれてやみません。実は、進化を遂げたトリカヘチャタテムシの中間的な交尾器を持ったチャタテムシが発見されているのです。現在、このムシとトリカヘチャタテムシの形態や系統を比較検討しながら、慎重に研究を進めています。遠くない将来、皆さんにもご紹介できることでしょう。
◇ あっという間の1時間。今回の取材を通して、チャタテムシというグループがどんな生態の昆虫なのかについて知りたくなりました。それはきっと、好奇心にあふれ、ムシ対する愛情を強く持ってらっしゃる吉澤先生の人柄に触れたからだろうと思っています。先生の今後ますますのご活躍を楽しみにしています。
------------------------------------------ ◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 田代修平(たしろ・しゅうへい) 1982年生まれ、埼玉県出身の現役教員。13年間の教員経験を生かし、2016年4月から未来館へ。未来館では宇宙やロボット分野を取り上げた先端科学を取り上げた活動を中心に行っている。趣味でアマチュアオーケストラに所属し、コントラバス奏者。