「共生教育推進学校」検討を 文科省の専門家会議、報告書素案を議論
通常学級に在籍する障害のある児童生徒への支援の在り方について検討する、文部科学省の専門家会議(座長=荒瀬克己・教職員支援機構理事長)が26日、オンラインで会議を開いた。会議では事務局の文科省から、特別支援学校を含めた2校以上の学校を「共生教育推進学校(仮称)」として一体化するモデル事業の実施を検討することなどを盛り込んだ報告書の素案が提示された。
「全ての学級に支援必要な児童生徒」を前提に
小学校などで特別な教育的支援を必要とする児童生徒が増加していると考えられることを背景に設置された検討会議で、今回が7回目。文科省が昨年12月に公表した調査結果によると、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒の割合は、小中学校で8.8%、高校で2.2%になっているが、こうした児童生徒のうち、障害のある児童生徒の実態把握や支援の仕方を検討するために各学校に設置されている「校内委員会」(公立の小学校、中学校、高等学校のほぼ全てに設置)で「支援が必要」と判断されているのはごく一部なのが現状だという。 報告書の素案では、こうした調査結果を踏まえ、全ての学級に特別な教育的支援が必要な児童生徒が在籍していることを前提に、校内委員会の在り方を再検討する必要がある、とした。
「共生教育推進学校」案にさまざまな意見
このほか、素案では、文科省が推進しようとしているインクルーシブ教育システムについて「一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場を整備しつつ、どの場であっても障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が可能な限りともに学ぶ環境を整えるものであると考える」と定義し、その上で、特別支援学校の現状について「例えば年に一度の文化祭等で地域の小中学生を招待するにとどまるなど、必ずしも十分ではない状況が見られる」と指摘している。 さらに、こうした状況を改善するため、「特別支援学校と小・中・高等学校のいずれかを、例えば『共生教育推進学校(仮称)』として一体化することも可能とする制度設計を念頭に置いた取り組みを進めることが必要」とし、こうした取り組みによって「一つの新たな可能性を示すべきではないか」との提言を盛り込んだ。なお、知的障害を対象とした通級指導についても、この共生教育推進学校の中で実現するとしている。 出席した専門家からは、特に共生教育推進学校について「理念に異論はないが、この用語でいいのか慎重に考える必要がある」「たまたま同じ敷地にあって一つの学校と銘打っているが、やっている中身は別々というのでは意味がない。教育課程の一体化も含めてモデル事業を動かさないといけない」「将来的に共生教育推進学校だけが共生教育を行うということになってしまうのでは」など、さまざまな意見が出た。
障害理解教育に言及を評価
ほかには「管理職をはじめとする教職員及び、障害のない児童生徒に対し、障害特性や障害に対する理解を深める取り組みを進める」との文言を評価する声があった。 次回の会議は2月15日。今回専門家から出された意見を踏まえて修正した報告書の素案について再度議論を行う予定。 (取材・文/ジャーナリスト・飯田和樹)