「国連勧告に沿ったインクルーシブ教育を」 市民団体が文科相あてに要請書提出 文科相発言撤回も求める
特別支援教育の中止などを強く要請した今年9月の国連障害者権利委員会の総括所見に関連して、当事者、保護者、支援者などからなる複数の市民団体が6日、インクルーシブ教育に関する教育政策の見直しなどを求める要請書を文部科学省の担当者に手渡した。この問題に取り組む東洋大学客員研究員、一木玲子さんは「最終的なインクルーシブ教育の実現は支援学校の廃止だと考えているが、まず最初のステップとして、普通学級に行きたいのに拒否されるといった差別的な状況をなくすことを訴えたい」と話している。(文・写真/ジャーナリスト・飯田和樹)
永岡文科相の発言を受けて
総括所見は、障害者権利条約に基づき今年8月にジュネーブで行われた審査を経て出されたもので、日本に対しては2014年の条約締結後初となる。障害者権利委はこの中で、▽特別学級の存在が分離教育を永続させていること▽障害のある子どもの普通学校への就学を拒否していること▽障害のある子どもへの合理的配慮が不十分であること――などに懸念を示し、特別支援教育の廃止を目的とした教育政策を進めることや、障害のある子どもの就学拒否を禁止する条項を立てることなどを勧告した。 しかし、この勧告からわずか4日後、永岡桂子文部科学相は「特別支援教育を中止することは考えていない」などと発言。勧告に従わない意向を示した。 こうした対応を受けて、審査で日本の実情を訴えた市民団体が、永岡文科相の発言の撤回を要請する内容などを盛り込んだ要請書を作った。要請書には全国の116の市民団体が賛同した。要望書を手渡した後は、市民団体と文科省の担当者との意見交換が行われた。
「ともに生きる社会はともに学ぶ学校から」
要請書を手渡した上田哲郎さんは「大阪では、障害を持った子を中心にしたクラスの取り組みも行われている。もっと大阪の教育の取り組みを見た上で、政策を進めて欲しい」と訴えた。 また「障害児を普通学校へ全国連絡会」の高木千恵子事務局長は「いま、いろいろな理由をつけて子どもを分ける動きが進んでいる。ともに生きる社会はともに学ぶ学校からといっているが、学校の場でこのように分けていくと、社会につながりがなくなる」と危機感を示した。 一方、要請書を受け取った文部科学省の山田泰造・特別支援教育課長は要請書の内容について「総括的所見を一言一句全部きれいに守らないと条約違反だ、とはなってない」「分離教育を廃止とかいわれるとできないところもある」などと話した。 また、この日は衆議院第二議員会館で、国会議員に国連勧告実施を求める声を届けるための院内集会も行われた。