後見人の弁護士から「ペット」呼ばわりされて……「成年後見制度」は、認知症の人や障害者を社会的エリートが搾取する仕組みではないか
国連から「人権侵害」を指摘
冒頭にも書いたが、日本の成年後見制度は、国連から「人権侵害」を指摘され、廃止勧告を突き付けられている問題だらけの仕組みだ。 それを改めるため、いま法制審議会は成年後見制度関連の法改正について議論を重ねている。論点は多岐に渡るが、いったん制度を利用したら本人が死ぬまで止められないこと、通帳管理しかしない弁護士や司法書士後見人に認知症などの障害者が死ぬまで報酬を払わされる問題は、最重要の論点の一つである。 この問題に関連して今年4月の第1回法制審議会で、審議会委員の久保厚子さん(知的障害者の権利擁護団体「全国手をつなぐ育成会連合会」顧問)は次のように発言している。 「何のお仕事もしていただく必要もないのに後見人に報酬を取られてしまうという言い方をするご家族がとても多い。身上保護の部分で、ご本人の状態をきちんと把握をしない後見人がたくさんおられたと聞いている。 親が一番心配しているのは身上保護の問題。本人が健康で、安心してつつがなく暮らしてほしいのが親の心配事で、そこが一番大事。それに必要なことに本人のお金を使ってほしいという感覚です。成年後見制度は財産管理が先に来るが、親が思っているのは逆なのです」 これは障害を持つ子供の親の立場からの発言だが、認知症高齢者の家族も同じ思いだろう。
社会的エリートが搾取する仕組み
私が送った質問書にH弁護士は「そもそも後見事務について、弁護士でなければできないことは一般的にそれほど多くはありません」と弁護士の仕事が限定的であることを認めながら、H後見人解任申し立てをM裁判官が却下したことなどを理由に、後見人としての自らの立場の正当性を主張。辞任を求める真由さんの主張を「一方的」「全くの言いがかり」と反論した。 真由さんはこう主張する。 「何もしない弁護士後見人に俊彦の財産から年間60万~70万円もの報酬を、俊彦が死ぬまで払い続けさせることの、いったいどこに合理性があるのでしょうか。障害者本人の財産と人権を守るという本来の制度の目的に反していると思います」 現在の成年後見制度の仕組みには、家裁という国の絶対権力が、認知症高齢者や障害者から資産を吸い上げて、法曹界仲間の弁護士や司法書士に流し込むという側面が見て取れる。 社会の最底辺の認知症の人や障害者を社会的エリートが搾取する仕組みと言っても過言ではないだろう。 現在、政府と自治体は成年後見制度の利用を盛んに推奨しているが、政府はこの制度のマイナス面を決して国民に伝えない。国民は、制度の実態をよく見極めて、できれば使わないのが賢明だ。
長谷川 学(ジャーナリスト)