後見人の弁護士から「ペット」呼ばわりされて……「成年後見制度」は、認知症の人や障害者を社会的エリートが搾取する仕組みではないか
根気よく訴えた末に
しかし真由さんは、懲戒請求が棄却されても、それでもなおH弁護士の解任と、自らの後見人就任を家裁に求め続けた。 もともと俊彦さんの後見人は真由さんの父親が務め、家裁が選任した監督人の弁護士が不正をチェックするかたちで支障なく回っていた。ならば以前のように、俊彦さんのことをよく知り、家族として深い愛情を持っている真由さんが後見人になり、それを監督人がチェックするかたちに戻すべきではないか。 俊彦さんのことを何も知らず、恐らく関心もないだろう弁護士に、あえて後見人をさせねばならない合理的な理由は見当たらない。 真由さんは、そうした主張を家裁に根気よく訴え続けた。そして2020年2月、真由さんを後見人にしない理由が見当たらないことから、家裁(担当者はM氏とは別の裁判官)は新たに真由さんを身上保護(介護・医療などの契約)担当の後見人に選任せざるを得なかった。H弁護士は引き続き、財産管理と身上保護の両方を担当した(この仕組みを「複数後見人・職務分掌型」という)。 その後、香川さん親子は、俊彦さんの通帳などをH弁護士に引き継いだ。なお家裁は、2人の後見人を監督する後見監督人弁護士を別途選任している。 現在、俊彦さんは都内の施設に入所している。俊彦さんを支えるはずだった香川さんが腰痛をさらに悪化させたことが原因だ。 俊彦さんは、施設に入所しているため、施設利用料や食費代などはすべて口座引き落としになっている。また俊彦さんには十分な資産があるため不動産売却の意思もない。俊彦さん名義のアパートも、専門の管理人が担当している。医療介護の契約といった身上保護についても、真由さんがすべて行っている。 つまり弁護士後見人の仕事はほとんどないのだ。こうした実態を踏まえ、真由さんは「財産管理や法律の専門家である弁護士が俊彦の後見人になっている必要はない」として、いまも繰り返し家裁にH弁護士の解任を求めているが、家裁は真由さんに回答すら寄こさないという。反論できないので口をつぐんでいるのだろう。