なぜ西武は”難攻不落”オリ山本由伸の攻略に成功したのか?
三塁側ブルペンでは誰も準備していなかった。8回二死二、三塁のピンチで登板し、オリックスの5番・モヤを147kmのカットボールで空振り三振に仕留めてベンチへ戻ってきた2番手の平良海馬へ、西武ベンチが9回のマウンドも託したからだ。 開幕から無失点を継続中の今シーズンで17試合目にして初めての、そして心身両面で負担が増す“イニングまたぎ”での登板。全幅の信頼を寄せる21歳の豪腕へ、西武の辻発彦監督は心のなかで頭を下げながら6-2の勝利に表情を綻ばせた。 「本来ならば9回は違うピッチャーをいかせてあげたいところだけど、いかんせんギャレットもいないし、登板過多のピッチャーも多かった。8回も平良じゃなきゃ抑え切れないと思ったし、本当に申し訳なかったけど、それだけ今日は大事な試合だということで勘弁してもらいたい。明日はゆっくり休んでもらいたいと思っています」 7日からのビジター8連戦を前に、3試合続けて勝利から遠ざかっていた負の連鎖を断ち切りたかった。しかし、投手陣では精彩を欠く守護神・増田達至の登録が抹消され、前日に打球を左ひざに受けて緊急降板したリード・ギャレットもベンチを外れていた。 ただ、勝利の方程式が崩壊していた状況だけが、平良に“イニングまたぎ”を託した理由ではなかった。メットライフドームの先発マウンドにオリックスが送った日本球界最高峰の一人に君臨するエース、22歳の山本由伸を7回途中でノックアウトし、リードを奪ったまま最終回を迎えていたからだ。 「一度に2点も3点も取れる、というピッチャーじゃないので。それだけの素晴らしいピッチャーという意味で、なかなか点を取れないだろうと思っていたけど、効率よく1点、1点、1点と序盤に3点を取れたのは非常によかったですね」 指揮官を喜ばせた先制点を奪ったのは初回。先頭のルーキー若林楽人が右越え二塁打を放つも、源田壮亮と森友哉が立て続けに空振り三振。特に源田は送りバントを2度失敗するなど、嫌な流れが生じかけていたなかで中村剛也が四球を選んでつなぎ、5番・栗山巧が真ん中に入ってきた153kmのストレートをセンター前へ弾き返した。 3回は左翼線への二塁打で、5回には一塁線へのセーフティバントで出塁し、三塁に進んでいた源田をともに中村のシングルヒットで迎え入れた。3回は152kmのストレートをライト前へ、5回には147kmのカットボールをレフト前へ弾き返した。