ロシアの「子なし推奨“宣伝”禁止」と日本の「結婚しなさーい」「ヨメにきなさーい」 怖いのはどちらか 北原みのり
作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は子どもを持たないライフスタイルを推奨する宣伝を禁止するロシアの法律と、日本社会について。 * * * ロシアでは先月、“子どもを持たないライフスタイルを推奨する悪質な宣伝”を禁止する法案に、プーチン大統領が署名した。下院議会では全会一致で可決されていたという。 ロシアも少子化だという。そもそもあれだけ国土が広大なのに、人口はたった約1億4600万人で、日本より約2200万人多いくらいだ。しかも年々出生児の数は減っていて、昨年は約126万人しか生まれなかった。とはいえ、日本では76万以下しか生まれていないので、こちら側からしてみれば、ロシアの未来のほうが明るく見えてしまう。なにせ国土は広く、資源は無限に近いレベルであり、しかも景気が悪くない。 そう、景気が、悪くないらしいのだ。 たとえば、私の会社はアメリカやヨーロッパの会社との取引がよくあるのだけれど、この数年間で取引先の人の顔が険しく暗く重くなり(特にドイツ人……というイメージがあります)、「数字数字数字をあげろーっ!」とどんどん怖い感じになっていくのに対し、ロシアと取引している企業の人たちは明るい顔をしている。先日もアメリカの企業の人と話していたとき、「日本では1カ月に10個しか売れない男性向け骨盤底筋群トレーニンググッズが、ロシアで月に500個売れている」と言っていた。すごく驚き、思わず声をあげて「なんでー!?」と叫びそうになる。 まず、アメリカの会社がロシアに輸出できていることに驚く(規制が解除されたらしい)。そして、ロシアで男性向けの骨盤底筋群トレーニンググッズ(要は男性の尿漏れ防止・性機能アップの商品)が売れていることに驚く。ロシアに暮らす多くの人は、今、自国が戦争をしている意識がもしかしたらないのかもしれない。いったい、今、ロシアはどんな空気なのでしょうか。日本にいて日本のメディアしか観ていないと、世界のリアルがわからない……そんな気持ちになる。 そして冒頭のニュースである。