ロシアの「子なし推奨“宣伝”禁止」と日本の「結婚しなさーい」「ヨメにきなさーい」 怖いのはどちらか 北原みのり
いったいロシアとはどういう国なのだろう。その問いかけは、日本っていったいどういうところなのだろうという疑問として跳ね返ってくる。 「子どもを持たない生き方をインターネット上などで宣伝してはいけない」というロシアの法律は、日本からすれば恐ろしく感じるが、じゃぁ、「高額アルバイトしましょ~!」と若い女性に呼びかける広告バスが街中を走る国は、恐ろしくないのだろうか。 最近、日本では国家試験に合格した医学生たちが、そのまま美容外科医を目指すことが問題になっている。お金になるから、というのがその大きな理由だそうだ。一方ロシアでは、もともと医師は公務員だったこともあり、今も給料が低く、社会的地位もそこまで高くなく、だからなのか、女性医師が全体の7割以上を占めているという。そして美容外科医は急増していない。それは、患者側からしたら、どちらが良い社会なのだろう。 私はコロナが明けたらロシアを旅したいなぁと思っていた。でも、もうその願いはきっとしばらく叶えられないだろう。これから先、心から安心して、心から自由な気持ちでロシアを旅できる日は、いつ訪れるのだろう。 世界がいろいろ行き詰まっているのを感じる2024年の師走。世界はこれ以上ないほどに分断されている。そしてどの国であっても、女性が味わう不幸の色はどこか似ている。その不幸の色の濃淡を比べてもしかたないのよ……とため息をつきながらも、来年こそは、戦争のない世界を見たい。
北原みのり