「子持ち様」問題…フォローする側も4割が「高ストレス」。アプリ活用の調査で判明、企業の制度でリスク減も
企業が対策⇨高ストレス抱えず
子育て社員は度々、子どもの体調不良で早退したり、休んだりする。特に、子どもが保育園に入園したばかりの時期は風邪をひくなどして休むことが多々あり、その現象を「保育園の洗礼」という人もいる。 今回、そのような事態に遭遇した場合、子育て社員だけでなく、それをフォローする同僚も一定数の人が「高ストレス」を抱えていることがわかった。そして、高ストレスにならないためには、できるだけいつもと同じ時間に食事をとったり、寝たりすることが重要だということも判明した。 ただ、働きながら食事と睡眠の規則性を維持することは、個人の努力では限界があり、企業の仕組みが不可欠だ。 DUMSCOの加勇田さんは、調査に協力した全員(176人)に対し、①リモートワーク②「シックリーブ(病気休暇)」など有給の特別休暇制度③勤務間インターバル④フルフレックスのいずれかの仕組みが実際に「機能」しているかどうかも尋ねた。 ①~④の仕組みは、食事の規則性を取り戻したり、睡眠時間の確保につながったりするもので、勤務終了後から翌日の出社までの間に一定時間以上を設ける「勤務間インターバル」については、自治体でも導入するところが出てきている。 調査の結果、高ストレスと判定された68人のうち、75.0%が「制度が形骸化」「いずれも制度化されていない」と回答し、「いずれかの制度が機能」と答えた人は25.0%にとどまったことが分かった。 一方、高ストレスと判定されなかった108人では、約9割の88.9%が「いずれかの制度が機能」と答えた。「制度が形骸化」「いずれも制度化されていない」と回答した人は11.1%にとどまった。 勤務先で①~④のような仕組みが機能していれば、子育て社員が早退したり、休んだりするなど、イレギュラーな事態が起きても食事や睡眠の時間を確保でき、高ストレスになるリスクを下げることができそうだ。 鈴木医師は、職場の運営方法について、「日本の職場では『皆が同じことを同じだけできる』ことを求められるため、業務量や時間のばらつきなどに対する不寛容を生みやすい」と指摘。そして、「企業がより柔軟な適材適所の体制を構築することが、メンタルヘルス対策だけでなく、より広いダイバーシティ・マネジメントにもつながると考えている」と語った。 DUMSCOの加勇田さんも、「誰かが突然休むなど、予期せぬ事態でのストレス対策は企業が率先して整えることが必要だということがわかった。一方、私自身も有効な具体策をなかなか見出せていなかった」と感想を述べた。ただ、今回の調査で「ソーシャル・リズム・メトリック」が解決のヒントになる可能性を感じ、「HR担当者として非常に嬉しく思う」と話した。 ◇ 【鈴木裕介医師プロフィール】 内科医、心療内科医、産業医、公認心理師。研修医時代に経験した近親者の自死をきっかけに、メンタルヘルスに深く携わるようになる。高知医療再生機構で医療広報、若手医療職のメンタルヘルス支援などにも取り組む。2015年、ハイズ株式会社に参画し、コンサルタントとして経営視点から医療現場の環境改善に従事。18年に「秋葉原saveクリニック」を開院し、院長に就任した。身体的な症状だけではなく、その背後にある種々の生きづらさ・トラウマを見据え、こころと身体をともに診る医療を心がけている。主な著書に「我慢して生きるほど人生は長くない」(アスコム刊)、「がんばることをやめられない」(KADOKAWA刊)。