「20トンローラー」安価な中国製品に対抗、酒井重工がインドネシアで生産する狙い
酒井重工業は2025年度からインドネシアで大型ローラーの生産機種を拡大する。24年9月から15トンクラスの「SV700」シリーズの生産を開始したのに続き、新たに25年6月から、より大型の20トン機種の「同900」シリーズも生産を始める予定。同国ではニッケル鉱山開発やプランテーション農園の造成工事でダンプなどの大型車の通行が増えている。道路を締め固める大型ローラーの需要拡大に対応すると同時に、現地生産による価格競争力向上につなげる。 SV900シリーズは現在、中国工場(上海市)で生産している。25年6月からは、主に10トンクラスの土木工事用汎用ローラーの生産拠点であるインドネシア工場(ブカシ県)で生産し、SV700シリーズと合わせてインドネシアに生産を移管する。 インドネシア工場での大型機種の生産計画は未定だが年10台規模と見られる。東南アジアの市況低迷によって稼働率が落ちている設備を活用するため、新たな設備投資負担はほとんど発生しない。 ただ大直径の転輪を作る際に、数センチメートルの厚い鋼板を1回で成形するなどの高度な熟練技が求められる。酒井重工業ではインドネシアの技術者向けに定期的に日本で工場研修を実施している。そのため「技能が上達し、今はインドネシア工場で現地作業員を教えられる」(吉川孝郎執行役員)レベルまで技能を習得できているという。 同工場での大型ローラーの生産は、安価な中国製品に対抗する狙いもある。 中国の不動産バブル崩壊で中国の建設機械が東南アジアに輸出され、価格引き下げ圧力が強まっている。インドネシア国内で生産することでこの動きに対応する。また同国だけでなく、ベトナムやタイなど周辺国にも輸出する方針だ。