『バカの壁』で「~の壁」タイトル本、続出どう思う? 「新潮新書」編集長「真似される側でありたい」
ベストセラーが出ると、似たようなタイトルを冠した書が出る。真似された出版社はどう思っているのか。タイトルへの思いや付け方などを、「新潮新書」編集長に聞いた。AERA 2024年11月11日号より。 【図表を見る】「AERAが選ぶ ベストセラーのタイトル」はこちら * * * 平成で一番売れた新書、養老孟司著『バカの壁』。現在、発行部数は460万部を超え、戦後の歴代ベストセラー5位に入っている。 「話せばわかる」などはありえない。人は自分の脳に入ることしか理解できない生き物で、そこに「バカの壁」が立ちはだかると説く書である。「バカの壁」は「新語・流行語大賞2003」のトップテンにも入った。それに追随するように「~の壁」という本が続出する。 「そもそも、『バカの壁』は養老さんが初期の著作で用いていた造語。古いつきあいの編集者がこれをタイトルにした新書を、と養老さんに提案して実現した企画です」 そう話すのは「新潮新書」編集長の阿部正孝さんである。本のタイトルについては「著者との会話の中でビビッと感じる言葉をいただくことが多いですね。千本ノックのようにいくつもいくつもタイトル案を出して、脳みそが空っぽになるまで出し尽くして、ふっと力が抜けた時にいいタイトルを思いつくこともあります」と阿部さん。もちろん編集部や販売、宣伝と関係する部署との打ち合わせを経て、最終的に著者との合意で決定していく。こうして新潮新書は『人は見た目が9割』(竹内一郎)、『国家の品格』(藤原正彦)、『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン、久山葉子訳)と後に真似されるキーワードを含むヒット作を生み出していく。 「『国家の品格』は後から出た『女性の品格』(坂東眞理子)の方が売れ、部数では抜かれちゃいましたね」と阿部さんはほほ笑んだ。 阿部さんは時代の流れを読みつつ、わかりやすく明解なタイトルにしたいと考えている。また普段の生活では関わりのないようなことを身近なこととミックスさせたタイトルも読者に響くと考えている。 「『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治)はケーキと非行少年のミスマッチがよかったのでしょうね」と話す。