ふるさと納税の最前線 全国20位“うなぎ戦略”の志布志市 都内に駐在・首都圏でPR 都市部“税金流出対策”進む
トラブルに負けず志布志ファン創出へ
志布志市は2018年、ふるさと納税の窓口として東京・中央区に駐在所を開設した。多くの自治体が経費削減のため東京からの撤退を進める中、逆行する形で関東でのPRに力を入れた。この戦略が功を奏し、実際に多くの寄付が関東から集まっているという。 ふるさと納税のトップランナーとなった志布志市だが、一方で、特設サイトがサイバー攻撃を受けたり、業者が産地偽装を行ったりと、度々トラブルにも見舞われた。 そのため個人情報を取り扱う専用のセキュリティルーム設置や、食品表示の検査体制の強化に向けた予算を計上するなどの対策を取り、志布志ファン獲得を進めている。 志布志市・港湾商工課の児玉祥一郎さんは「色々な形で、志布志に来てもらったり、首都圏でファンミーティングを開いたり、ふるさと納税のその先にある志布志ファンを創出していく事業に注力している」と話す。前述の東京駐在所発足時に首都圏で志布志のセールスに奔走した児玉さんだけに、説得力が違う。
クラファン型も 鹿児島市の流出対策
一方、人口の多い都市部では税金の流出に危機感を強めている。人口が多い分、他の自治体にふるさと納税をする人が多く、税金が流出しやすい傾向にある。 鹿児島市では2019年度以降、ふるさと納税による流出超過が続いている。2022年度の流出超過額は7億4000万円にも及び、2019年度比で4倍以上と年々拡大している。 こうした状況を受け、鹿児島市は2023年にふるさと納税推進室を設置。これまで市民税課が兼務していたが、専従部隊とすることで体制を強化。推進室の石宮聡室長は、2022年には740点だった返礼品を、現在は約1200点に増やし、仲介ポータルサイトの数も4(2022年度)から18(2023年度)に拡大したと話す。 また、2023年からは応援したい事業を指定して寄付をしてもらうクラウドファンディング型のふるさと納税も導入し、市内にある平川動物公園のコアラを応援するといった鹿児島市ならではの仕掛けにも力を入れている。 その結果、2023年度は寄付額が前年の2倍近くに増え、流出額との差が狭まった。 法政大学・平田英明教授は「ふるさと納税でお金が出ていくことを指をくわえて見ているというところから、各自治体は少しでも取り返そうというトレンドに変わりつつある」とふるさと納税の現在地を分析する。 ふるさと納税は自治体間の競争を促す一方で、地域の特産品を全国に広める役割も果たしている。県外の友人や知人がふるさと納税で鹿児島の自治体を選んでいると聞くとうれしくなるものだ。 いかに自分たちの街の魅力を伝え、税収に結びつけるか。自治体担当者たちの挑戦は続く。 (鹿児島テレビ)
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