甲子園、選手50人以上が「熱中症」訴え…最悪の事態が起きたら? “出場経験あり”弁護士に聞く「責任の所在」
結果の回避措置怠れば責任問われる可能性も
こうした対策をとっているが、酷暑の下での激しいプレー。大会本部によると、大会10日目の8月16日までに、出場選手52人からめまいやだるさ、気持ち悪さなど、軽度の熱中症と疑われる症状が報告されているという。 熱中症は重度になれば、意識障害が生じ、生死にもかかわる危険な病気だ。これまで甲子園大会での死亡事故などは起きていないようだが、最悪の場合に、関係者が責任を問われる可能性はあるのだろうか。 石川・遊学館高校在学中の2002年夏に自らも甲子園大会に出場した高根和也弁護士はこう説明する。 「基本的な考え方としては、熱中症により死傷者が出ることを具体的に予見し、それを回避することができる立場にある者が結果を回避する措置をとらなかったときに、刑事・民事上の責任が生じる可能性がある、ということになります」 さらに具体的な責任の所在については、「論理的な可能性としては、大会主催者(高野連など)、選手の所属団体(自治体、学校法人など)、それらの団体の代表者(知事、市区町村長、理事長・校長など)、責任教員(顧問教員)などに責任が生じる可能性があるだろうと思います」と語る。
「具体的な状況」が大きな争点に
責任の所在や重さをめぐって裁判になった場合、どういうことが争点になるのか。高根弁護士は、「具体的な状況次第」だと強調する。 たとえば、全出場校の登録選手全員がグラウンドに整列し、基本的にその場を離れることができない開会式。 「(そうした状況で)関係者が次々に出てきてあいさつをし、プロスポーツなどのように著名な歌手が出てきてコンサートさながらに楽曲を次々に披露するなどして、何時間もセレモニーが継続するようなことがあれば、熱中症により死傷者が出ることを具体的に予見し得る状態に至る場合もあると思います。 仮にそうしたことがあった場合、そのような方法で開会式を実施すべきではないとして、大会主催者である高野連に責任が生じることがあるかもしれません」(高根弁護士) また、「ここまで極端な事例はなかなかない」としつつ、「監督が試合中に水分をとることを禁止して選手たちに試合をさせれば、監督に責任が生じるだろうと思います」と続ける。 その上で、前述した結果を回避する措置を執ったか否かに加え、「当日の天候、試合(開会式)時間の長短、その選手の体調と疾患の有無、当人からの申し出の有無、異変(普段の様子との違い)の有無、水分補給ができる環境の有無、などが争点になると思われます」(高根弁護士) 高根弁護士は、自らが出場した2002年大会を「冷夏でしたので暑さについて意識した記憶はありません」と振り返る一方、クーリングタイムや2部制の導入などの取り組みについて、「当然、前向きにとらえるべきものと思います」と語る。 また、大会運営のうち、開会式について「現状は、全出場校の登録選手全員がグラウンドに整列する方法で行われていますが、希望制(希望した学校・選手のみ参加)とすることも一案かもしれません」とも提案する。