YOUは何しに日本へ? ドミニカ元五輪BOX代表が日本王座挑戦権を獲得
デスティノは、急ぎ観光ビザで来日してピューマ渡久地ジムの門をたたく。2年前の春のことである。すでに30歳オーバー。渡久地聡美会長は「教えるのが上手かったのでトレーナーで」と考えていたが、本人が現役続行を強く望んだ。 就労ビザがなかなか下りず、移籍後、2戦目は、タイでWBA世界3位でPABAウェルター級王者のテーラチャイ ・クラティンデーンジム(24、タイ)に挑戦したが、階級がひとつ上だったため4回KO負け。その後、渡久地聡美会長が大使館に掛け合い、ビザが下りてからは、日本で2戦2KOで今回の最強挑戦者決定戦のチャンスをつかんだ。 「ドミニカの誇りと、こうやってチャンスをくれて受け入れてくれた日本への感謝の気持ちを持ってリングに上がっている」 この日、控え室で通訳を買って出てくれたのは、妻の亜理紗さん(27)だ。その胸には、生後4か月の花夏(ハンナ)ちゃんが抱かれていた。デイスティノが来日後、通訳を手伝っているうちに恋が芽生え、現在は、まだ妻が仕事をしながらデスティノのボクシング人生を支えている。 「凄くやさしくて気を使ってくれる人」 試合前以外は、デスディノが家事全般を引き受けているという。 亜理紗さんを通じて、ドミニカから日本に来ての苦労は?と聞くと、「やはり生活」と複雑な表情を。現在、応援スポンサーを募集中だが、まだプロボクサーとしては食っていけない。 それでも亜理紗さんは、こう目を細める。 「みんな年齢とともに夢をなくしていくじゃないですか。なのに彼は、日本にまできて世界王者の夢を追いかけている。毎日、トレーニングを地道に積み重ねている。人として、その姿は尊敬できます」 料理もするデスティノの得意のドミニカ料理は料理用の甘くないバナナを使ったものだというが、好きな日本食はラーメン。日本語は、まだ挨拶程度しか喋れないが、リスニングはできつつあるという。