リヴァプール元主将が語る30年ぶりのリーグ制覇。「僕がトロフィーを空高く掲げ、チームが勝利の雄叫びを上げた」
最後のタイトルからの年数をからかうユナイテッドファンに…
僕の個人的な夢はチャンピオンズリーグの優勝だったから、マドリードのあの晩(編注:2018-19シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝でトッテナムに勝利して優勝した夜)にそれを手に入れて、心を満たすことができた。だが同時に、クラブにとっては、国内でリーグ優勝することが、おそらくはチャンピオンズリーグよりも重要だということもわかっていた。チャンピオンズリーグでは、このクラブは感情を揺さぶるような輝かしい歴史を誇っている。だがプレミアリーグでは長期間にわたって優勝を逃しつづけており、トロフィー奪回はサポーターの切なる願いだった。 リヴァプールがかつてこのリーグの盟主だったことは、誰もがよく知っている。それを取り返すまでは、このチームにまだ未達成のものが残されていることを意味していた。リーグ優勝を叶えるまで、最後のタイトルからの年数をからかうユナイテッドファンに、同じことをやり返すことができるまで、ファンは決して満足しない。 いまやそれが叶ったのだ。僕たちはさらに成長しつつあり、自らの力で優勝を成し遂げ、クラブの歴史に新たなページを書きこんだ。ユルゲンは過去の名選手につねに敬意を払っているが、いまのチームが必ずやクラブの新たな物語を作り、新たな世代のファンの記憶に残るのだと確信していた。いまようやく、かつての巨人たちに肩を並べることができた。同等になったとはとても言えないが、国内最高のチームの呼び名を手に入れ、過去の偉大なチームと同じ幸福をサポーターにもたらすことで、そのすばらしい実績の一部をなぞることができた。
コップ・スタンドで授与式を行うことを提案
いまだかつて、無人のスタジアムでトロフィーが掲げられたことはなかった。プレミアリーグから希望の場所について質問され、国中がロックダウンのさなかにあることを考慮して、更衣室でやりたいと返答した。だが、リーグ側からは現実的ではないと指摘された。正式な授与式が行われるほか、カメラが入ることになっていた。また感染予防の面からも、狭い空間での開催は認められないとして、却下された。 僕はコップ・スタンドで行うことを提案した。コップ・スタンドはクラブの中心だ。そこでトロフィーの授与式を行えば、ファンとともにそれを掲げるのに近づけられるだろう。こうした経緯で、コップ・スタンドはバナーで装飾され、ヒルズボロの悲劇で亡くなった人々に捧げる言葉が掲示されることになった。スタンドの真ん中には、授与式のための表彰台が設置された。それこそ僕たちの19度目のトップリーグ優勝によるトロフィーを掲げるのに最も適した場所だと感じられた。 授与式は特別なものにしたかった。僕はこのときも、トロフィーを受けとる役目をミリー(ジェームズ・ミルナー)に託そうとした。入団してから、彼にはさまざまな面で助けてもらった。自らを最大限に生かしたキャリアを積んできた一流選手だが、実力に見合った評価を受けていない。一緒にプレーしたなかで、プロ意識の高さではいちばんだ。彼はすべてをきちんと行う。このチームの成功にも欠かせない存在で、人の目につかない裏側でさまざまな貢献をしている。 勤勉でリーダーシップがある選手だという評判は耳にするが、実は認識されていないだけで、世界最高の選手のひとりなのだ。ジェームズ・ミルナーはほかには存在しない。それだけははっきり言える。 「おまえが掲げるんだ。俺が下になって肩車するのならありかもしれないが、ともかくトロフィーを掲げるのはおまえだよ」