《ブラジル》10年後の日本祭りはどんな姿か? 問われる県人会の今後と母県の理解
2019年日本祭りでは食のブースの調理が間に合わず、県人会によっては長大な列ができてしまい、来場者の不満が募ったことがあった。「県人会会員の高齢化もあって調理能力が落ちている。若い人はボランティアの仕事に興味を持ちにくい。プロのレベルで食を提供するには改革が必要」と前置きし、日本祭り参加がキッカケとなって県人会の青年部などが活性化をする会も多いと言われる中、市川さんは「まだまだ活性化が足りない」と厳しい見方をしている。 プロ水準の運営を求めるなら、専門のイベント会社に委託したらとのアイデアも繰り返し、県連代表者会議では出てくる。だが市川さんは反対だ。「たくさんのボランティアが無償で参加してくれているのは、我々が無償でこのイベントを運営しているから。主旨が変わってきてしまわないかと心配」と考えている。実際に2019年に実行委員会を外部委託して赤字が生じたほか、外部の人間に賄賂疑惑が持ち上がった事例などもあったという。これは大変難しい問題だ。 市川さんは「入場料をもっと上げてもいいと思う。最低でも50~60レアルに見直さないと、続かない」と見ている。 25年前に始まったこの祭りを原型として、現在ではブラジル全土各地に同様の祭りが拡散している。今回も「サンパウロ州内各地はもちろんバイア州、ミナス州、パラー州などからも日系団体が来ている。彼らはここで見たものを参考にして、自分たちのイベントに活かそうとしている。若い彼らがこの種のイベントをやることに誇りを持ってもらえることが、とても大事です」と締めくくった。
県人子孫だけでは会をやっていけない現実
市川さんの前、2016~19年まで県連会長を務めた山田康夫さん(73歳、滋賀県、同人会会長)に日本祭りの課題を聞くと、真っ先に「資金より人材育成が課題」と即答した。「日本祭りを実施するには、県人会がしっかりしていないといけない。でも県人会に次の世代が育っていない。うちの県人会ブースも3分の2は子孫ではない人たち。友人ネットワークで集まった、県と関係のない人たちが現在の会を支えている。多かれ少なかれ、どこの県人会も一緒。その現実をもっと県庁も理解してほしい」と述べた。 「県民に税金の使途を説明するときに、県人子孫に絞った使い方をしている方が、県庁が説明しやすいのはよく分かります。でも現実は、県が好きな人、県人子孫の友人などのネットワークが会を支えている。彼らも県のファンを増やすなど国際化の役に立っていることを理解してほしい。日本祭りを続けるためには、そんな彼らの協力は不可欠だし、そんな彼らにも県費留学や研修など何かメリットがあった方が続きやすい」との意見を表明した。 さらに山田さんは「ボクが県人会会長を始めた2006年、県人会会長の3分の2が1世だった。現在1世会長は僕を入れて4~5人しかいない。かつては代表者会議の3分の2は日本語で進行されたが、今は95%がポルトガル語になった。時代が急速に変わっています」と訴えた。